全酪新報/2021年8月20日号
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「第1四半期生乳需給、生産基盤対策進み増産で推移」――懸念の業務用需要は依然停滞

2021-08-20

農水省牛乳乳製品課は8月11日、2021年度第1四半期(4~6月)の生乳需給を取りまとめた。生産量は生産基盤強化対策が奏功し全国的に増産で推移。飲用向けも巣ごもり需要が一巡しつつあるものの、コロナ禍以前と比べ堅調に推移した。一方、未だ低迷が続く業務用需要の影響から乳製品在庫は依然高水準で、このほど20年度分を対象に加工原料乳生産者経営安定対策事業(ナラシ)が発動した(既報)。それらの動向を踏まえ、大熊規義課長は「見通しは難しいが、新型コロナの動向も踏まえ、今後の状況を注視していく」との認識を示した。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

お断り=本記事は8月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「九州北部中心に大雨被害、酪農家5戸で生乳廃棄発生」――8月18日時点

2021-08-20

停滞した前線の影響で8月11日から九州北部を中心に記録的な豪雨があり、土砂災害や河川の氾濫、道路冠水などの被害が発生した。酪農関係では5戸の酪農家で生乳廃棄があったほか、牛舎浸水や搾乳機器の不具合、乳牛の体調悪化などの被害が発生した。また、中国地方では集送乳に遅れが生じたものの被害は発生していない。


九州生乳販連によると長崎県では12日に道路が通行止めとなり、集乳できなかった1戸の酪農家で生乳廃棄が発生。佐賀県では、牛舎浸水による搾乳機器の故障で1戸が生乳を廃棄。14日に発生した停電の影響により1戸が生乳を廃棄した。同県は16日から通常出荷を再開した。


福岡県では、14日に道路冠水で1戸の酪農家の集乳を見送った。翌日から集乳を再開したが、一部の生乳が廃棄された。また、牛舎浸水した酪農家では乳牛の状態が悪化したため、自主的な生乳廃棄を続けている。


鹿児島県では17日に土砂崩れがあったが、迂回ルートで集乳。遅れは生じたものの生乳廃棄は発生していない。

「自民党、2022年度概算要求へ議論開始」――国産飼料の生産拡大を支援

2021-08-20

自民党の農林・戦略調査会と農林部会は8月17日、党本部で合同会議を開き、2022年度農林関係予算概算要求に向け議論開始した。会合で農水省が示した8項目を柱とする重点事項案(額無し)のうち、酪農関係では、2021年度予算に引き続き酪農家等の労働負担軽減・省力化に対する支援を盛り込んだほか、子実用トウモロコシ等の生産利用体系の構築など、国産飼料の生産拡大に向けた支援が重点事項。党として。関係団体から意見を聴取した上で、8月末までに財務当局へ具体的な予算を要求する。


農水省の案では、畜産・酪農の生産基盤強化に必要な施策として、▽畜産生産体制の強化▽ICTを活用した畜産経営体の生産性の向上▽畜産・酪農における環境負荷軽減▽国産飼料の生産拡大▽草地関連基盤整備▽畜産・酪農経営安定対策――などを整理。国産飼料の生産拡大に向けては、水田を活用した青刈りトウモロコシや子実用トウモロコシの生産・利用を支援する。


議員からは、国産飼料の生産拡大を農水省挙げて取り組むよう求める意見をはじめ、水田における飼料用米等の推進も国産飼料の生産拡大と一体的に進めていくべきとの意見が上がった。

「農水省、畜舎建築特例法の省令案示す」――パブコメ経て11月公布へ

2021-08-20

農水省畜産局企画課は8月3日、今年5月に成立した「畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律」(以下特例法)に関して、生産者や農協、関係団体等との意見交換会をオンライン形式で実施。新基準を適用する際に必要となる利用基準の詳細等を示した省令案を示した(詳細は2面)。今後9月頃にパブリックコメントを実施し、早ければ11月に政省令を公布する。その後、決定した省令について農家や建築士等への説明、Q&A作成、都道府県の体制整備などを進め、22年4月の施行を目指す。


同特例法は、畜舎建築利用計画の認定制度を創設、その認定を受けた計画に基づき建築される畜舎等については、建築基準法上の特例として認めるもの。畜産業の競争力強化に向け、建築コストの削減をはじめ、畜産業の振興を目的とする。


会合では、出席者から「今の酪農の8割が含まれる3千㎡ということだが、地域によっては大型牛舎の建築も進んでいる。今後を見据えると、近い将来、見直しも迫られるのではないか」(JA道東あさひ)、「酪農では3千㎡を超える牛舎も多い。対象の拡大について検討も必要ではないか」(瑞穂農場)といった意見があった。このほか、出席者からは円滑な運用に向けた建築士への特例法の周知の促進や、畜種に応じた利用基準における滞在人数・時間の設定を求める声などが上がった。

「生産基盤強化の重要性強調」農水省・森健畜産局長に聞く――酪農・畜産政策の方向性語る

2021-08-20

本紙含む農林記者会はこのほど、農水省の7月1日付人事で就任した森健畜産局長へ共同インタビューを実施。森局長は酪農・畜産政策の方向性として、畜産物の輸出拡大と生産基盤の強化や理解醸成推進の重要性を強調。特に酪農に関しては、酪肉近で掲げた30年度目標の生乳生産量780万㌧の達成に向け、増産をはじめ輸出拡大等による需要開拓、都府県の基盤強化や家族経営の支援などの課題に取り組んでいく姿勢を示した。


――初めに、就任にあたっての抱負をお願いします。


01年に生産局・畜産部へ再編されて以来、20年ぶりの畜産局の復活になる。この20年で総産出額は農業全体が縮小する中、畜産物は大きく拡大して輸出も好調に伸びており、(同局復活は)こうした酪農・畜産業界全体が尽力してきた成果。畜産局が担う畜産物の輸出拡大に向け、生産基盤強化は元より、持続的な畜産物生産に向けた支援も同局として取り組むべき重要な課題だ。生産者や関係者の知見や知恵をいただきながら、畜産局の職員とともにしっかり取り組んでいきたい。


持続化に関しては、消費者への理解醸成も重要だと考えている。国際的な議論では、一部、『畜産悪者論』を叫ぶ声や畜産への規制強化を求める意見も上がっている。一方、世界の畜産物貿易量は大幅に増加傾向で推移しており、今後、消費者や販売者の畜産物生産への関心は高まっていく可能性は高い。人が食べられない資源を食料へ換えているといった酪農・畜産の意義に加え、環境負荷軽減や地域資源を活用した産業を目指している姿を消費者へ見せていくことがこの先必要だ。


――6月に規制改革実施計画が閣議決定され、それに基づき生乳取引の実態調査を行うことになりましたが、現時点の進捗状況は。


現在、生産者や乳業メーカー、チーズ工房を対象とした実態調査の準備を進めている(7月28日時点)。酪農家が何を考慮して出荷先を選択しているかの理由も含め、幅広く調査したい。また、年度途中の契約変更等は減っているが、未だ見られることは問題だ。引き続き現場への周知を徹底したい。


3月の規制改革推進会議では、「指定団体が取引先の乳業や運送会社へ圧力をかけ、自分たち以外の事業者と取引させないようにしている」などの報告があった。農水省としては現時点でそうした事実があるとは承知してないが、仮に事実であれば公正な取引に支障をきたす問題のある行為だ。まずは調査結果を踏まえて課題を見極め、対応していく。


――それらも踏まえ、指定団体の重要性はどのように認識していますか。


近年頻発する自然災害による突発的・局地的な需給変動や消費地である都府県の生産量が減少する中、構造的にどうしても夏場の需給はひっ迫してしまう。やはり広域的・機動的な需給調整は必要であり、指定団体は非常に重要な役割を担っている。18年度の制度改正では酪農家が自由に出荷先を選択できるようになったが、牛乳・乳製品の安定供給や酪農家の経営安定を図る上でも指定団体の果たす役割は重要だと考えている。引き続き指定団体は日々の配乳調整や広域的な需給調整に努めていただきたい。


さらに、酪農家の戸数減少や運送業における働き方改革から、生乳輸送コストが増嵩する中、生乳流通体制の合理化に努めることも大事だと思う。酪農家の所得向上と経営安定のため、需給調整による牛乳・乳製品の安定供給に加え、合理化についても一層の努力をお願いしたい。


――入省後、酪農・畜産関係で印象に残ったエピソードがあれば教えてください。


入省2年目の秋の農村派遣研修で1カ月間、稲作との複合をしている山形県の酪農家で、現場を体験した。現在は規模拡大して息子さんに継承されているが、当時は搾乳牛20頭程度の経営だった。酪農を知る上で基軸となる重要な経験となっている。現場を知ったうえで行政を行う必要があると思う。今後も出来る限り、足を運びたい。


――最後に、今後の酪農政策の方向性をお聞かせください。


酪肉近の目標の中で20年度の生乳生産量は2年連続増の743万㌧で、都府県においては8年ぶりの増産に転じるなど、基盤強化の成果がでてきている。引き続き30年度目標の生乳生産量780万㌧の達成に向け、畜産クラスター事業による増頭や個体乳量の改良、飼養管理の省力化・効率化など総合的に取り組んでいく必要がある。


また、都府県基盤強化も重要な課題で、その大半を占める中小規模・家族経営は、近隣農家との連携や資源循環など地域を支えている観点からも重要性は非常に大きい。


一方で需要面では、新型コロナの影響で生クリーム等の需要減少や乳製品在庫の積み上がっている状況に鑑みると、単に増産すればいいわけではなく、需要の回復・開拓への努力が必要。特に乳製品は、豊富な栄養面や加工用途からも需要開拓の可能性は幅広い。輸出も視野に入れつつ、生産者や乳業等関係者が一体となって需要の確保・開拓に取り組むことが重要だ。酪肉近の目標達成を期待したい。


――ありがとうございました。


▽森健畜産局長のプロフィール


森健畜産局長

愛知県出身。1987年3月東京大学・法学部卒業。同年4月農水省入省。在オーストラリア日本国大使館参事官(2007年5月~10年4月)、生産局農産部地域作物課長(12年12月~14年6月)、生産局総務課長(14年7月~15年9月)、大臣官房総括審議官・国際(20年8月~21年6月)などを歴任。

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