全酪新報/2019年12月10日号

「価格・関連対策は都府県基盤強化が大きな課題」――酪政連が酪農ヘルパー、環境対策の拡充要請

2019-12-10

2020年度の畜産物価格・酪農関連対策の決定に向け、自民党畜産・酪農対策委員会(赤澤亮正委員長)は12月4日、東京・永田町の自民党本部で会合を開催した。酪政連やJA全中などの団体から要請を受けた。酪政連は酪農ヘルパー事業の拡充や家畜排せつ物処理施設の整備と補修に対する支援などを求めた。冒頭、赤澤委員長は「特に都府県酪農の生産基盤強化が大きな課題」と述べた。出席した議員からは、上昇している集送乳コストへの配慮や規模拡大要件の緩和などを求める意見が出た。価格・関連対策は12月11日に決定する見込み。

酪政連は家族型経営の営農継続や担い手確保に必須な酪農ヘルパー事業の拡充を強力に訴え、施設整備から20年前後経過した家畜排せつ物処理施設の整備と補修への対策も重要だとしたほか、生産者間の不公平感を回避するため、新たな補給金制度の適正な運用、都府県を中心とした生産基盤強化対策などを要請した。


大槻和夫委員長は「離農に歯止めがかからない中、自然災害が拍車をかけている」と述べ、被災した設備や粗飼料生産基盤への支援拡充に加え、自家発電機の導入にも支援を求めた。


また、JA全中の飛田稔章酪農委員長は「全国一斉で家畜排せつ物処理施設の更新時期に来ている。離農のきっかけにもなっている。改善をお願いしたい。また、生乳輸送コストが急激に上昇している。指定団体があまねく集乳し、機能を発揮できるよう適切に設定してほしい」と求めた。


団体要請後の議員による意見交換では、経営規模に関係なく中小規模の酪農家に対して経営を維持・継続する場合にも支援を手厚くするよう要件緩和を求める意見が多く出たほか、集送乳調整金の決定に当たり、上昇を続ける輸送コストに配慮すべきなどの声も上がった。


それらの意見に対し、渡邉毅畜産部長は「畜産クラスター事業の要件緩和は財政当局に要望している」などと答えた。


同委員会は11月下旬から12月上旬にかけ、鳥取県、北海道、茨城県、栃木県の酪農現場を視察し、酪農家と関係者と意見を交換。4日の団体要請、その後の議論を経て、11日に党として価格と関連対策を決定する見込み。


現地視察・意見交換会の報告の中で赤澤委員長は「補給金・集送乳調整金は現行の価格以上、総合的な家畜排せつ物処理施設への支援、酪農ヘルパーが職業として成り立つようにとの要望などをいただいた」と述べた上で「条件不利地でインフラが失われる地域を存続させるだけでなく、国民への食料供給、農地、地域、国土、領土を守っているのは酪農だという強い訴えが印象的だった。そういった思いをしっかりと受け止めて決定したい」と述べた。

お断り=本記事は12月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「乳牛増頭奨励、家族経営対策も」TPP関連政策大網を改訂―― 補正予算で実施

2019-12-10

自民党のTPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(森山裕本部長)は12月4日、党本部でTPP交渉における国益を守り抜く会(小野寺五典会長)との合同会合を開き、政府が示した「総合的なTPP等関連政策大綱」の改定案を承認した。酪農関連では、生産基盤強化対策として、乳用雌牛の増頭に対する奨励金交付のほか、畜産クラスター事業を中小の家族経営や条件不利地への要件緩和、地域での経営継承の支援策の拡充などを盛り込んでいる。それらの事業は年内に発表される2019年度補正予算で措置する。


同日午前、参院本会議で日米貿易協定が承認されたことを受け、自民党は会合を開催。森山本部長、江藤拓農相、西村康稔経済再生担当相、小野寺会長をはじめとする議員が出席した。


冒頭、森山本部長は「日米協定が承認されたことにより、大型の経済協定が出揃うことになる。4年前に大綱を策定して以降、国内対策を実施してきた。改定案では、必要な施策は盛り込めたと思っている」と挨拶。西村担当相は日米協定が承認されたことについて「TPP11、日EU・EPAを含めると、GDPで世界の6割、貿易額で23兆㌦、人口13億人の巨大な市場を構築していくことになる」などと述べた。


大綱に基づく対策は、補正予算で実施。酪農に関する部分については、乳用雌牛の増加を図るための増頭奨励や毎年度補正予算で実施している畜産クラスター事業を中小・家族経営の経営継承支援などに拡充するほか、家畜排せつ物処理の円滑化、公共牧場・試験場等のフル活用、IoTやAIを活用したスマート農業実証の加速化などを推進する。


会合終了後、森山本部長は大綱改定案の中の乳用牛増産奨励について「総合的に実施する」と説明。「家族経営は日本酪農の基礎。中山間地の農村維持も大切なこと」などと述べた。

「自民畜酪委が茨城・栃木視察」酪農基盤弱体化が焦点――赤澤委員長「手を打つ必要ある」

2019-12-10

12月11日の畜産物価格・関連対策の決定を控え、自民党畜産・酪農対策委員会は12月2日、栃木県と茨城県の酪農家を視察。その後、栃木・大田原市の大田原市役所湯津上支所で赤澤亮正委員長(衆・鳥取2区)と井野俊郎委員長代理(衆・群馬2区)、簗和生事務局次長(衆・栃木3区)が栃木県内の酪農家や関係者と意見交換した。赤澤委員長は、経営規模に関係なく支援を求める声が上がったなどと説明した上で「一番のポイントは都府県の酪農基盤が弱体化していること。手を打たなければならないと思っている」と述べた。


意見交換会の冒頭、赤澤委員長は「みなさんと次の世代の酪農家が元気を出して酪農を発展させていけるような環境を作りたい。その思いを共有し、政策に反映したい」と挨拶した。


酪農家視察では、茨城・かすみがうら市の山岸秀一さん、栃木・大田原市の前田宏さんと藤田良夫さんの牧場を視察。意見交換には、県内の農協から栃木県農協中央会の髙橋武会長、栃木県酪農協の石川正美組合長、酪農とちぎ農協の臼井勉組合長、北那須酪農協の藤田貞一組合長、箒根酪農協の伊藤昭光組合長、両毛酪農協の山﨑伝造組合長ら役職員のほか、6名の酪農家も出席した。


一方、政府・与党からは、赤澤委員長、井野委員長代理、簗事務局次長の3名のほか、農水省畜産振興課の犬飼史郎課長、飼料課の関村静雄課長、畜産経営安定対策室の星野和久室長、牛乳乳製品課の金澤正尚乳製品調整官らが応じた。


意見交換会では、主な意見として面積や規模要件に関係なく、現状維持で頑張っている酪農家への支援、酪農ヘルパーなど人手不足への対応、乳質向上の取り組みへの支援などを求める声が上がった。


意見交換会終了後、赤澤委員長は「予算の制約がある中で優先順位を付け、どのような対策を打てるのか議論して政策価格と関連対策を決定したい」と述べた。

「乳業が牛乳乳製品の安定供給に懸念」――都府県酪農の弱体化で

2019-12-10

大手乳業3社がこのほど開いた2020年3月期第2四半期決算に関する説明会では、生乳生産基盤の弱体化が進む都府県酪農の現状をめぐり、明治ホールディングス(HD)の川村和夫社長と雪印メグミルクの西尾啓治社長がそれぞれ言及。牛乳・乳製品の安定供給に向け、都府県の基盤強化が喫緊かつ最も重要な課題であるとの認識を示すとともに、乳業者としても支援策を講じていく必要性を強調した。


明治HDの川村社長は、次期酪肉近論議でも俎上に上がっている都府県の生産基盤弱体化について「原料の生乳調達は大変重要なことであり、都府県の脆弱化には懸念を持ちながら注視している」として、自身が会長を務めるJミルクや明治HDでも酪農家向けの支援を講じていることを説明した上で「微力ではあるが、こうした活動を繰り返し丁寧に行うことで、生産者の意欲や新たな新規参入の呼び水となるような支援ができれば」と述べた。


また、雪印メグミルクの西尾社長は、今秋の牛乳供給においても逼迫が生じた状況に触れつつ、その解決に向け「日本全体で牛乳・乳製品の需給を安定的に行うには都府県の生産拡大、あるいは減少傾向に歯止めをかけることが酪農乳業界としての最大の課題だ」と強調した。

「規制改革推進会議、畜舎建築基準の見直し進める」――農協改革は継続的に注視

2019-12-10

規制改革推進会議農林水産ワーキング・グループ(WG)は11月20日、第1回目の会合を開き、意見を交わした。新たな委員で始動した今期は来年6月までをサイクルとし、新規就農支援とスマート農業の2つの審議事項と前期から継続的に実施する農協改革など6つのフォローアップ事項について議論した。畜舎建設に関する規制の見直しも継続的に進める。


規制改革推進室の小見山康二参事官によると、フォローアップ事項の「畜舎に関する規制の見直し」については、市街地から離れて建設される畜舎等を建築基準法の適用対象から除外する特別法の検討状況や内容について確認を行うこととしているが、出席者からは「実際にまだ進んでいない。しっかりやるべき」という意見が出た。


そのほか、「農業活性化にはスマート農業がとても重要。海外と比較する必要がある」「新規就農支援に関して制度の検証と見直しが重要。現在の制度と実態を調査すべき」「農業は保護の側面が強く、企業としてみると、成長という観点が少なかった」「全農改革は現場で十分に進んでいるという感覚がない」――といった意見が出た。


規制改革推進会議は内閣総理大臣の諮問機関。委員の任期は2年で、10月31日に始動した今期は19名の委員で構成し、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光取締役会長が議長を務める。議論の分野は、農林水産WGのほか、「成長戦略」「雇用・人づくり(教育、保育)」「投資等(金融、電波制度、エネルギー、物流等)」「医療・介護」「デジタルガバメント(民間の行政手続きコストの削減)」の合計6つで、それぞれにWGを設置している。


農林水産WGは佐久間総一郎委員(日本製鉄常任顧問)、竹内純子委員(国際環境経済研究所理事・主席研究員)、南雲岳彦委員(三菱UFJリサーチ&コンサルティング常務執行役員)、新山陽子委員(立命館大学食マネジメント学部教授)の4名で構成。座長は佐久間委員が務める。

連絡先・MAP

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