全酪新報/2017年3月1日号
「加工原料の補給金、恒久法に位置付け」―自民が改正法案を了承、部分委託は国が関与
自民党は2月22日、農林関係の合同会議を開き、現行の加工原料乳生産者補給金等暫定措置法を廃止し、新たに2018年4月から恒久法である「畜産経営の安定に関する法律」(畜安法)の中に位置付ける改正法案を了承した。指定団体と同様の要件を条件に補給金の交付対象者を拡大するほか、指定を受けた事業者には集送乳調整金を交付する。最大の論点となった部分委託のあり方については、省令で指定団体等が取引を拒否できる要件を規定するほか、国が販売計画をチェックすることで、いわゆるいいとこ取りを排除。引き続き需給の安定を図る。
お断り=本記事は3月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「規制改革推進WGに農水省が法案骨子説明」―枠組みに極端な異論なし
規制改革推進会議農業ワーキング・グループは2月21日、第11回の会合を開き、畜産経営の安定に関する法律(畜安法)について農水省から法案の骨子に関する説明を受けた。事務局は「法案全体の枠組みについて鋭い指摘といったやり取りはなく、極端な異論は出なかった」と説明したが、指定団体等が生乳取引を拒否できる事項を省令に定めることについては「引き続き重要な事項が定められるといった認識を共有した」としている。
農水省は委員に対する説明の中で、恒久的な制度に位置付けるが、加工原料乳生産者補給金の交付対象を拡大することにより、加工に仕向ける生乳を増やすことで酪農経営の安定化を図る趣旨を強調した。
事務局によると、委員からは「省令の具体的な内容はどの程度決まっているのか」、「特殊な場合は取引を拒むことができるとしているが、例えば、短期間とはどのくらいなのか」などの指摘があったほか、「指定事業者をうまく拒める理由を利用した事実上の排除がないか、取引の拒否がないかどうか、農水省の責任で見ていきたい」といった意見も出た。
「酪政連が酪農制度改革問題で要請」―部分委託、抜け道に懸念
酪政連は2月21日、東京・代々木の全理連ビルで常任・中央委員合同委員会を開き、酪農制度改革(加工原料乳生産者補給金制度改革の取りまとめ等)の与党の決定に向けて、指定団体の需給調整機能や生乳の安定供給に支障を来すことがないよう4項目の要請事項を決議し要請活動を行った。会議の意見交換の中では、論点となっている部分委託のあり方を不安視する意見が出たほか、需給緩和時の対応を懸念する声も上がった。また、今後の動向が懸念される日米2国間交渉への参加と日EU・EPA交渉の安易な合意に反対することも決議。会議終了後には、要請運動を展開した。
冒頭、佐々木勲委員長は「部分委託については、国が省令で定めることで需給バランスは取れると思う。しかし、そこには抜け道がいくつもあるのではないか。そのことを心配している。これまで50年間、我々が守ってきた暫定措置法に区切りを付け、しっかりとした恒久法にしなければならない。そのためには酪農家の団結が必要だ」と述べた。
指定団体制度改革に関して酪政連は①指定団体が取り組んでいる業務推進計画に基づく生乳受託業務の合理化等による機能強化に対し、国は引き続き支援すること、②補給金対象事業者が行う月別の生産量、用途別処理量に関する計画・実績の提出、報告及びその内容が適正となるよう、国は監視すること、③乳質確保のために都道府県による処理工場への立ち入り検査、検査結果の公表等の義務を補給金対象事業者に課すこと、④集送乳調整金の交付は適正に行うこと――の4点を決議した。
一方、TPP交渉をめぐっては米国がTPP交渉からの離脱を表明したことにより、発効が困難となったものの、日米2国間の貿易交渉の可能性が危惧されている。加えて、昨年12月に突如動きが加速し、一時は年内の大筋合意を目指していた日EU・EPA交渉の動向が懸念されている。
笛田健一幹事長は「自民党の会合で政府からは日EU・EPA交渉内容の説明がなく、出席した議員からは不満の声が多々上がった。我々も心配している」と説明。その状況を踏まえ、酪政連は日米2国間交渉への参加と日EU・EPA交渉の安易な合意に断固反対することを決議した。
「酪政連が日米2国間及び日EU・EPA交渉に反対する決議」
酪政連が2月21日に決議した「日米2国間及び日EU・EPA交渉」に関する決議の内容は次の通り。
米国・トランプ新大統領はTPP交渉から永久に離脱する大統領令に署名し、新たに我が国との2国間交渉を進める意欲を示している。一方、日本政府は、日EU・EPA交渉に関しても、主席交渉官交渉などを開催し、大筋合意を目指して協議を進めている。
しかし、TPP参加12カ国は、我が国が参加してから2年余の交渉を経て合意に至っており、この枠組みでの協定発効を目指すべきと考える。したがって、安易に日米2国間協議に参加すること、および日EU・EPA交渉の安易な合意には、断固反対する。以上、決議する。
「初妊牛価格やや弱含み」全酪連が発表―需給はタイトで大幅な下げはなし
全酪連札幌支所の発表によると、3月1日現在の初妊牛価格は85~95万円で、やや弱含み。昨年来、上昇を続けてきたが、2月に入って一服したと見ている。しかし、依然として高値で推移しており、今後はメガ・ギガファームの大口導入もあり、需給はタイトに推移。そのため、大幅な下げはないと見込んでいるが、市場価格の推移を注視する必要があるとしている(相場は血統登録牛中クラス、庭先選畜購買による予想)。育成牛(10~12カ月齢)は55~60万円、経産牛は55~65万円で、ともに横這い。初妊牛と同様、価格水準は高い状態が続いている。