全酪新報/2016年12月1日号
「加工原料乳補給金全生産者を対象に、部分委託も容認」要件は今後検討 ― 自民党が指定団体制度改革とりまとめ
自民党は11月25日、農林関係合同会議を開き、指定団体改革、JA全農改革等を含めた農業競争力強化プログラムを策定した。加工原料乳生産者補給金は条件付きで全ての生産者を交付対象へと変更し、部分委託も可能とするなどの改革を実施する。国は今後、その前提となるルール作りの作業を開始する。JA全農改革については、今後5年間で自己改革を実施するよう促す。プログラム策定に当たり、自民党は「指定団体機能を発揮することは今後も極めて重要」などとする決議を行った。
お断り=本記事は12月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「政府が指定団体改革を正式決定」-与党の取りまとめ等を踏まえる
政府の農林水産業・地域の活力創造本部(本部長=安倍晋三首相)は11月29日、今後の農政の方向性をまとめた改定版「農林水産業・地域の活力創造プラン」を決定した。指定団体制度等改革については、与党の取りまとめと規制改革推進会議の提言を踏まえ、同プランの中で政府の方針として正式に決定した。
プランでは、加工原料乳生産者補給金の交付対象の拡大に向けて、「早急に基本的なスキーム(年間の販売計画等の内容、部分委託・販売に関するルール等)を設計し、関係者の意見を聞き、十分な調整を経て改革していく」としている。
また、生産資材価格形成の仕組みの見直し、収入保険制度の導入、戦略的輸出体制の整備、肉用牛・酪農の生産基盤強化策などTPP対策の検討継続項目についても、与党の取りまとめを踏まえ政府の方針として正式決定した。
「大山乳業農協が創立70周年記念式典を開催」 ― 「80年、100年につなげる」幅田組合長
鳥取県の大山乳業農協(幅田信一郎組合長)は11月19日、鳥取・琴浦町内に全国から約200名の関係者を集め、創立70周年記念式典・祝賀会を開いた。幅田組合長は「我々の先輩のみなさんが熱い思いと苦労の中で今日を築き上げてこられた。そのことを大切にしながら、時代の変化に対応し、鳥取県にふさわしい酪農乳業の姿を模索して、次の80年、100年につなげていきたい」と挨拶した。大山乳業農協は70周年を迎えるに当たり、2026年を目標とする酪農ビジョンを発表した。式典・祝賀会には、全酪連の砂金甚太郎会長、中央酪農会議の迫田潔専務らが出席した。
「何よりも信頼関係を大切に」創業70周年迎えたオリオン機械・太田哲郎社長にインタビュー- 課題解決をテーマに製品を開発
オリオン機械株式会社(長野県須坂市)は、今年で創業70周年を迎えた。太田哲郎社長にインタビューし、製品開発に込める思いや今後の経営の展望などを聞いた。
――国産初の搾乳機器を発売した経緯は。
当社は1946年に父・太田三郎が創業した。最初の10年間は戦後の動乱の中、消防用の真空ポンプを作る下請けの会社だったが、ある酪農家さんから「輸入品よりも安い搾乳機器ができないか」とご提案いただいた。そこで、真空ポンプの技術を活かし、1957年に国産初の搾乳機器を売り出した。
酪農家さんからの提案を真摯に受け止め、諦めずに年数をかけて開発したことにより、酪農機械の分野で自社ブランドを構築することができた。
酪農機械は365日、1日も休まずに使う、生き物相手の機械です。そのため、故障や不具合が生じた場合、直ちに対応する必要がある。よって、我々は単に機械を納品すればいいわけではなく、機械を納めてからのアフターサービスが極めて重要になる。社員には365日、24時間サービスする感覚がある。酪農機械分野に身を置くことにより、産業機械分野にもその精神が活かされている。
我々は何よりもお客様との信頼関係を大切にしている。当社の社員は数多く牧場に通い、まるで親戚のような信頼関係を築いている。そのくらいの信頼関係が生まれなければ、我々の仕事は成り立たない。技術とサービスの両面が1つのセットでなければならない。
――製品開発・事業展開にはどのような思いを込めているのか。
当社は開発型企業。お客様が困っていること、求めていること、なおかつまだどこも取り組んでいないことをテーマに、課題を解決するための製品をいち早く開発してきた。
例えば、搾乳ユニット自動搬送装置・キャリロボは、重いユニットを搬送する作業をなくした。また、個体ごとの飼養状況を一括管理できる精密飼養管理システム・チャレンジマン20Pは、自動給餌機で1頭1頭のきめ細やかな給餌ができる究極の個体管理システムだと思っている。
日本には数十年に及ぶつなぎ飼い酪農の経験があり、つなぎ飼いにおける省力化や効率化に関する研究は、世界中で当社が先行している。これからもオートメーション化を進める技術を、日本で初めて、世界初といったテーマで展開したい。
国が導入を推進している搾乳ロボットへの対応も重要なテーマだ。日本では70%近くがつなぎと牛舎と言われているが、これからはつなぎ牛舎は減少する一方、フリーストール牛舎やロボット搾乳は増えていくだろう。搾乳ロボットは後継者が夢を持てるシステムの一つ。その夢を持っているならば、ぜひ応援させていただきたい。
フリーストールやロボット搾乳の場合、コンクリートの堅い床で飼養するため、つなぎ牛舎より蹄や肢の疾病が発生しやすい。そこで、疾病をいかに減らすか、そのために我々は何をすべきか。それも大きな課題だ。我々は酪農家さんと一緒になって疾病と闘っていると思っている。
そのほかにも、昨今の酪農経営を取り巻く問題の一つに、子牛の死亡事故がある。それは悲しいことであり、経営のロスにもつながる。その分野のノウハウも蓄積し、課題を解決するための研究を進めたい。
――今後の展望は。
つなぎ牛舎、フリーストール牛舎、ロボット搾乳のそれぞれ課題としている部分を埋めていくことが研究テーマになる。機械を使ってどのように経営を改善できるのか、どのように儲かる経営に貢献できるのか。これからも酪農家さんのニーズを常に考えて仕事を展開したい。
もう一つ私の重要な仕事は、社員のモチベーションが向上する環境を作ること。モチベーションが上がれば、会社は必ず発展する。そのためにも、若い社員には幅広くチャンスを与えたい。若い人が頑張ると、その上の社員も頑張る。
一つ例を紹介させていただくと、技能五輪全国大会という、青年技能者の技能レベル日本一を競う技能競技大会があり、当社は7年前から冷凍空調技術部門に出場者を派遣している。今年は2年連続で大手家電メーカーを相手に勝利し、金メダルを獲得しただけでなく、銀メダル、銅メダルも独占した。それにより、製造部門のモチベーションがグッと上がった。
また、女性の果たす力も大きい。当社は毎年酪農部門に女性社員を採用している。彼女たちの力をもっと活かしたいと考えている。
「明治、新容器のおいしい牛乳」-関西、中国、四国地区でも発売
㈱明治は11月17日、独自に開発した口の広いキャップ付きの新容器を採用した「明治おいしい牛乳900㍉㍑」を来年3月下旬から関西、中国、四国地区で発売すると発表した。すでに九州地区では9月から先行販売している。
11月9日の決算説明会の席上、同社は「九州地区は1㍑パックを全て置き換えた。売上は計画を若干上回っている」としている。