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真菌による乳房炎 環境汚染菌に要注意 オガコの敷料利用 そのまま使うと悪菌培養

2004-10-01

鯉渕学園の卒業生が50頭搾乳しながら父親の家畜商も引き継いだ。主として東北の家畜市場の常連になり、色々な情報をメールしてくれる。


前回の「ネオスポラの流産問題」についての質問に続き、今回は「真菌が乳汁1ml中に1万5千個ある乳房炎に遭遇した。ヨード剤は副作用があるようなので、頻回搾乳で真菌を排除するしか処置法はないのか?人間用の特効薬を試用できないか?」という質問だった。


それでは、まず真菌とは何か?菌だから細菌の仲間と思いがちだが、それはとんでもない誤解で、細菌にとっては天敵ともいえるペニシリンを産生して次々と細菌をやっつけてくれる〝青カビ〟の仲間である。人間では手足に棲みつく〝水虫〟の類である。研究熱心な彼は、難物の乳房炎乳を家畜保健所の検査室に持ち込んで確認したようだ。


最近、家保や農業共済の検査結果からは頑固な乳房炎には抗生物質とは無縁というより、産みの親である真菌(カビ)や酵母、甚だしい例では、藻類まで検出されている。


一方、「ウィルスによる乳房炎は」としばしば質問されるが、幸いにして乳汁中ではBSEプリオンと同様に発育が悪いようだ。文献的には口蹄疫乳房炎などがあるそうだが、牛の体力の低下に伴った二次元的細菌感染と考えられている。


ウィルスに最も近縁の細菌マイコプラズマ(人の長期感冒様原因菌など)による乳房炎が通常の抗生物質療法で症状が悪化し、多くが4分房とも罹患する難物となって登場している。


未経産牛がようやく分娩したのに盲乳分娩だった。搾乳経験はなかったず。ひょっとすると乳房炎検査で試し搾りをしたまま消毒せず放置したので、夏期乳房炎に感染したかと手遅れを悔やむ。


日頃の観察管理は搾乳牛に重点が移りがちで、未経産や乾乳牛の乳房異常は見逃しが多い。この夏期乳房炎は刺縄や針金による刺傷から環境常在で泌乳していない時に感染が多い慢性化膿菌(コリネピオゲンス)が侵入したものだ。発病初期の段階で未経産用の細かい導乳管で排膿の上、ペニシリン系抗生物質で加療することで分娩時の盲乳発生が予防される。


乳頭穴の損傷などで導乳管搾乳の後に乾乳した場合、化膿巣が拡大し乾乳中に患分房横腹の皮膚が自壊して、悪臭を発する緑色膿が噴出。甚だしい時は患分房が乖離した例もあるが、死亡例は聞かない。 最近は捨てるはずの乳房炎乳を子牛に飲ませる人は少なくなった。乳房炎乳を飲ませると、乳中の病原細菌が吸飲した子牛の口腔内で長期間生存し、子牛同士の乳頭のしゃぶり合いで相手の乳頭から乳腺へと乳房炎病原菌が侵入する。分娩後まで生き延びて発病原因になっている。この無乳連鎖球菌は死亡例は少ないが、伝播・生存力は抜群である。


治療中や治療後の経過日数が少ない場合、抗生物質反応が持続するように、乳汁中には病原菌が生き延びるし、耐性菌の存在も考えられる。


さらに、乳房炎乳の乳性分は変質し、人間にも子牛にも飲用不適であるため、哺乳は厳禁だ。


ある酪農家から「クレブジェラ菌の対策はどうするのか」と質問されたことがある。この酪農家は、牛床をきれいにして乳房炎を予防しようと、わざわざ新鮮な「ノコクズ」すなわちオガ粉を購入して敷き料とした。


すると、搾乳する度に乳頭穴にオガ粉がこびりついていて、これを除去するのに時間がかかり、搾乳時間が大幅に延長させられた。搾乳手順も大きく狂うばかりでなく、タチの悪い乳房炎に悩まされるようになった。早期治療を実行しようと手元にある乳房炎軟膏を注入したが、症状は前回の乳房炎と違って好転せず、泌乳停止寸前となった。


さて、ここで手元になぜ軟膏が残っているのか?前回の乳房炎が簡単に治ったようなので、早めに加療を中止して、次回用に残していたわけだが、本来は1本ずつ3日間は加療するのが原則であり、潜在化を防がねばならない。そもそもオガコは新鮮なものほど木質の植物栄養が富んでいて、植物性の細菌にとっては快適な培地である。


さらに、乳頭穴にふんや土とともに付着して乳汁から栄養まで供給されるので、「クレブジェラ菌」なる大腸菌類の仲間である環境汚染菌が増殖する。


大腸菌類(コリフォーム菌)は人や牛の腸管に常在し、健康にも役立っているわけだが、O―157大腸菌で有名となったように、出産前後の体力減退時に日和見感染(通常は無害なものが環境の変化に乗じて有害感染する)を起こし、毒素を産生して激甚な乳房炎を発症する。前回搾乳した時には異常を感知できなかったのに、次回の搾乳時には起立不能となり死に至る例もある。 かつて、オガコで苦労した酪農家は「もどしたい肥」なるものを考え出した。使用済み敷料をたい肥発酵させるために新しいオガコを少量ずつ添加し、充分に発酵堆肥化させる。消費者には聞こえが悪いが、たい肥のリサイクルである「もどしたい肥」として再び敷料に利用する。これはオガコを使うよりも牛舎は乾燥し、問題の「クレブジェラ」騒動も終息傾向だ。


メガファームでも衛生管理も専従者が徹底して実施しているが、分娩翌日には頓死する環境由来「えそ性乳房炎」が突発するようになった。


例えば、大病院で手術は成功したにもかかわらず、院内感染で患者は死亡してしまうようなもの。そのような時代が酪農にも到来し、日和見感染が頻発。緑膿菌・真菌など通常の消毒薬や抗生物質の効果がない環境汚染への対処が重要である。

本連載は2003年5月1日~2010年4月1日までに終了したものを著者・中野光志氏(元鯉淵学園教授)の許可を得て掲載するものです。

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