乳滴/2019年3月10日号
移民も支える米国農業
選挙公約の柱に不法移民対策の強化を掲げたトランプ米大統領。2月15日には、議会承認を得ずにメキシコとの国境に壁を建設する費用を確保するため非常事態を宣言するという強硬策を発表した。このやり方に反発し差し止めるために提訴する州が16州にも及んでいる。
移民を巡るこうした動きが実は米国の農業、中でも大規模農業を支える労働力に影響を及ぼしている。従来から米国の大規模農業はメキシコ系を中心にしたヒスパニックの労働者に支えられているのは知られている。「ヒスパニックの労働力が少なくなり、例えば果樹園の収穫人が確保できない。より大規模な農場に農場ごとリースせざるを得なくなっている。安価に働く労働者がいないと成り立たないのが米国の大規模農業である」。米国に支部事務所を置く、ある日本の農業団体であった報告だ。
中小規模から大型、超大型のメガ・ギガ酪農へと、大きいことは効率が良いとの政策の流れがあるが、実は利点と共にリスクも様々ある。労働力の確保もその一つ。SNS等のコミュニケーション手段の発達に伴い、日本でも労働条件の良い所に雇用労働者が流れてしまうリスクが常にある。
世界有数の農業大国の米国で何がリスクになるかも注視していきたい。