乳滴/2018年5月10日号
〝乳酸菌〟宇宙に行く
炎症性腸炎等で苦しむ人の新治療法として腸内フローラ(細菌叢=細菌のいわゆる花畑)のバランスを整える「糞便微生物移植療法」が実際に効果をあげているという。他人の糞便を生理食塩水で懸濁させ、患者の大腸に注入。腸内フローラを正常化させるものだ。
ヒトの腸内には、1千種類、100兆個以上の腸内細菌が存在する。有害菌の増殖や有害物質の生成を抑えたり、免疫力を調節する良い働きが知られている。人間は腸内細菌と共に生きて生活しており、病気になるのも健康でいられるのも、腸内フローラの状態を無視して語ることはできない。近年は腸内フローラの研究が花盛りだ。
先頃「乳酸菌宇宙に行く」(文芸春秋刊)と言うユニークな書名が気に入り読んでみた。宇宙空間では、当然、病院に行くことはできない。そのため宇宙飛行士の予防医学や健康管理の観点から、腸内細菌が注目されているのだ。
腸内細菌の研究がやがて「究極の予防医学」となり、将来の月や火星などへの長期にわたる有人探査に向けた健康管理技術につなげようという遠大な構想だ。
腸内細菌を整える食品には、乳酸菌飲料やヨーグルトが含まれる。酪農こそ健康を支える誇りある産業である。皆さん、胸を張ろう。