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酪農と文学 連載46

マーク・トウェインといいますと誰しも「トム・ソウーヤの冒険」などを思い浮かべます。このアメリカの作家は短編小説もかなり書いています。


今回紹介する作品は「地球からの手紙」の中の「イヴの自叙伝」から選ばれたものです。


乳牛の体から、どうしてあんなにおいしいミルクがでてくるのだろう、と考える子供らの素朴な発想を短編小説に仕上げるとともに、その神秘性をコミカルにも表現しています。彼は動物を描くとき「並々ならぬ情愛とユーモアをそそぎ……」とは編集のM・ガイスマーの言葉である。

ミルクはどうして雌牛の中に入るのか 「マーク・トウェイン動物園」よりアマゾンで検索


原乳組織は毛から 子供の夢の推理

1988-01-01 マーク・トウェイン動物園

こうした短編作品を〝コマ切れ〟に紹介していくことは、かなり苦痛を伴います。何故ならば短歌の一字一句に注釈をつけているようなもので、一気に読み、幾度となく全体を読みきって、読む者が各々の感慨をつかみとることこそ大切ですから――。


それでも幼い小学生が、どのようにして牛乳は乳牛の体に入りこんでくるのだろうか、という素朴で神秘的な問題に真剣に取り組む、それをやさしい目でみつめる、この作品を紹介せざるを得ません。


先ず、書き出しは『科学のための偉大な勝利を次には私が獲得しました。つまり、ミルクはどうして雌牛のなかにはいるかという問題です。私たちは2人とも長いあいだこの神秘に驚嘆(きょうたん)しつづけてきました。何年ものあいだ、2人で雌牛たちのあとをつけてまわりました。昼のあいだです。けれども雌牛たちがそういう色の液体を飲む現場をとらえることはできませんでした(後略)』


結論は出ています。どのようにして、乳牛がミルクをのみ、われわれに提供しているかをつかみとった(科学の勝利)、というわけです。


2人の小学生の科学への追及の手順はきわめて論理的です。昼間、乳牛がミルクを飲んでいない。それなら、子供らは夜になってミルクをどこかで飲んでいるにちがいないということで「夜どおし」見張りをつづけます。交替で。


昼夜にわたって、乳牛らを観察しつづけても、そのナゾは解けません。1人の女の子(多分)は、観察に誤りはないのか、追求の仕方が、非科学的ではないだろうか、などと夜の牧草地に身を横たえながら星空を見つめながら瞑想(めいそう)にふけるのです。


星を見ながら、彼女の頭を横切ったのは、胸も躍るグッドアイディアでした。思いつきのすばらしさのあまり、アダム(何故か男の子の名前だけ明確)にもその夜はうちあけず、行動に移ります。どうした方法を用いたか?


『(前略)森の奥深くの小さな草原を選び、小枝を編んで、しっかりした囲いをつくりました。雌牛を1頭そのなかに入れました。からからになるまで乳しぼりをして、それからその雌牛をとじこめておいたのです。飲むものは、そこには一滴もありません。(後略)』


少女のとった方法は、スジが通っています。昼も夜も乳牛がミルクを飲まないのなら全ての口から入るものをシャットアウトすれば、かならず乳牛は、その実体を明らかにする、それはまちがいないのだ、と。


少女(?)は1日中、自分のとった手法に気もそぞろでした。いよいよ〝ナゾの解明〟ができる時が刻一刻と近づいてくる。アダムは仲間がすばらしいアイディアの実践に夢中なのに九九の表づくりにいそがしく友の行動に気がつかない。6×9が27の表づくりなのは愉快です。


さて、次の文章をお読みになれば一気に結末が訪れます。『(前略)私は忍び出て雌牛のところに行きました。胸はどきどきするし、失敗したのではないかと思うと手がひどくふるえて、しばらくは乳首をぎゅっと握ることができませんでした。それから、ちゃんと握ると、乳が出てくるではありませんか!8リットル。8リットルも乳が出て、それをつくるもとのものは何もないのです。私はすぐに解き明かしができました。』


少女の結論。『ミルクは口から入るものではなく、大気中から雌牛の毛を通して凝縮(ぎょうしゅく)されるのです。』この後、少女がアダムに一連の結論を話すとアダムも大喜びしたことは勿論です。


『走って行って、アダムに話しました。彼は私と同じくらい大喜びしました。私を誇りに思う気持ちはなんとも言い表しようがないほどでした。』


作者は子供のまちがった原因究明の方法についてはいっさいふれておりません。むしろ乳牛も含めてとてもあたたかくみつめています。

本連載は1983年9月1日~1988年5月1日までに終了したものを平出君雄氏(故人)の家族の許可を得て掲載しております。

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