全酪新報/2021年9月20日号
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「生乳生産3%増で好調も消費軟調で需給緩和」――8月販売実績

2021-09-20

9月は暑さによる生産減と学乳再開で例年であれば飲用向け生乳がひっ迫傾向となるが、一転、今年は需給緩和の事態となっている。お盆以後全国的に暑さが収まり生乳生産量が伸長する一方、例年ほど飲用需要は伸びず、業務用需要も停滞している。一部地域では2学期開始がおくれるなど例年にない需給状況となっている。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

お断り=本記事は9月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「脱粉・バター向けが想定上回る」中酪・寺田事務局長――在庫対策が課題

2021-09-20

中央酪農会議の寺田繁事務局長は生乳の需給動向について、「乳製品需要は訪日外国人の需要減少や業務用需要が回復せず、脱脂粉乳やバターに仕向けられる生乳は予測を上回る水準で推移しており、今年度末の在庫量は過去20年間で最も多くなる見込み。酪農乳業界では、この在庫対策が大きな課題だ」との認識を示した。


また、最近の酪農情勢について「昨年度から一気に需給緩和状況になり、脱脂粉乳やバターなど乳製品向けに仕向けられる量も増加推移が見込まれている。今年は非常に過ごしやすい夏だったので牛にとっても快適な環境で乳量が増えたのが大きな要因だ」と述べた。9月7日、教育ファームスキルアップ研修会の主催挨拶で述べたもの。

「酪農ヘルパー全国協会の新会長に隈部洋氏」――9月13日

2021-09-20

酪農ヘルパー全国協会は9月13日に開催した臨時総会(書面決議)で役員補選を行い、新たに隈部洋氏(全酪連会長)と長恒泰治氏(おかやま酪農協組合長)を理事に選任した。また、同日に行われた理事会で隈部氏を会長に選任した。任期は2023年度定時総会終結まで。砂金甚太郎会長(全酪連前会長)と岡田穂積理事は退任した。


隈部新会長は就任にあたり「酪農ヘルパー制度は、酪農経営にとって不可欠な存在だが、一方でヘルパー要員の不足や利用組合の小規模化等の課題を抱えている。微力ながら課題解決に努める」と話した。

「日本酪農の勢力」~21年畜産統計を基礎として~その1
『飼養戸数』 畜産・飼養調査所「御影庵」主宰・阿部 亮

2021-09-20

毎年、農林水産省から2月1日現在の日本における飼養戸数、頭数等、乳牛に関する基本データが示される、国勢調査結果と言ってよい、2021年の畜産統計は7月9日に公表された。これから何回かに亘って、この基本調査を基礎として、現在の日本酪農の勢力を見て、これからを考えてゆきたいが、今回は乳牛飼養農家戸数をテーマに採りあげる。


1.戸数の変遷と現在、そしてこれから


10年以降の10年間の戸数変化を見ると、15年以前と16年以降では様相が異なっている。15年以前の5年間の減少数の平均は北海道が202戸、都府県が660戸であったが、16年以降~20年迄の5年間の平均減少数は北海道は168戸、都府県は496戸と15年以前の5年間と比べかなり下回っている。そして、21年は北海道は5720戸で前年よりも120戸減少、都府県は8150戸で前年よりも370戸減少している、両地域とも減少数はさらに下回ってきた。21年2月、全国には1万3900戸の酪農家があり、その中で北海道が41%、都府県が59%を占めている。変曲点ともなった16年から20年の間には何があったのだろうか。


酪農家を取り巻く環境を見てみよう。一つは全国平均のプール乳価。15年には100.5円と100円を超え、16年101.1円、18年103.4円、19年、20年は105円台と上昇を続けてきた。もう一つはトウモロコシのシカゴ相場。この間、1ブッシェル(25.4㌔㌘)3㌦後半を中心として変動が小さかったことから、国内の配合飼料の価格も安定していた。この2つの環境が戸数の減少率を抑制してきた要因の一部だろう。


さて、これからはどうだろうか。今、懸念材料がある。昨年の終わり頃からトウモロコシのシカゴ相場が上昇してきた。そして、為替相場や海上運賃も悪い方に動いて、国内での乳牛用配合飼料のバラ価格が以下のようなテンポで上昇してきた。①21年1月には前四半期よりも1㌔当たり3.1円の上昇、②21年4月には1月よりも1㌔当たり5.6円上昇、③21年7月には前四半期よりも1㌔当たり4.7円上昇(全畜種平均)――である。これが、戸数の変化にどのような影響を及ぼすのか、1、2年先の畜産統計の内容が気懸かりだ。


2.酪農家群像の多様性


次に酪農家の飼養頭数規模別の戸数分布を見よう。成畜飼養農家が1万3500戸、子畜のみの飼養農家が326戸である。成畜飼養農家における頭数規模別の戸数分布比率は北海道と都府県では大きく異なる。30頭未満は北海道が13.4%、都府県が46.7%、30頭以上~79頭は北海道が51.0%、都府県が40.9%、80頭以上~99頭は北海道が11.5%、都府県が3.9%、100頭以上は北海道が24.3%、都府県が8.5%である。北海道は都府県に較べて規模の大きな酪農家の比率が高い。年間の出荷乳量が1千トン以上で経産牛を100頭以上飼養している酪農家はメガファームと呼ばれる。


300頭以上飼養のメガファームは21年2月には全国で316戸あり、一方で飼養頭数が19頭未満の飼養農家が2730戸ある。その間に、種々の規模の酪農家が全国に分散配置された状態で、それぞれの役割を持ちながら存在している。しかし、316戸の300頭規模以上の農家の頭数は2730戸の19頭未満の農家の頭数よりも多く、それは、国内の生乳生産量の維持に貢献している。同時に農村の風景と文化を維持する役割を小農、中農が担っている。そのことを自らが自負し,周りが尊重してゆかねばならない時代に入ってきつつある。


3.戸数減少の内容


酪農家戸数減少の原因は何処にあるのか。農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢」(21年6月)では、「高齢化・後継者問題39.2%」、「他の畜産・耕種農業部門への転換23.0%」、「経営者等の事故・病気・死亡16.8%」、「負債・将来への不安6.2%」、「経営統合3.9%」、「環境問題その他10.9%」とある。ここに示されている統計表では19年度の経営離脱者数は536であるが、この数値から、高齢化・後継者問題で離農した数は全国で210にもなる、地域別では北海道が77、都府県が133と都府県が多い。18年11月に出された中央酪農会議の酪農全国基礎調査をこの結果と併せてみた、17年の経営者の平均年齢は北海道が52.1歳、都府県が59.2歳、全国は57.3歳で北海道が若い。そして、60歳以上・70歳以上の層は北海道が30.4%なのに対して都府県は56.2%と多く「めぐる情勢」の内容と符号する。


上記2と関連することなので、この中央酪農会議のデータをもう少し分析し、紹介しよう。そこには、飼養規模と経営主の年齢の関係が述べられている、1万379人の調査結果であるが、「概ね小規模層ほど高齢層の割合と平均年齢が高く、大規模層ほど若齢層の割合が高くて平均年齢が低いという傾向が見られた」とある。具体的な数値を見よう。76頭以上100頭未満の規模では30・40・50歳代の経営主の割合は62%に対して、60歳代は29%であり、11頭以上30頭未満の規模では60・70歳代以上の経営主割合が61%と高い。


高齢化による経営離脱を補ってくれるのは若い新規就農者である。これについても上記「めぐる情勢」に状況が示されている。新規参入者の数は17~19年で27~30人で後継者を含む新規就農者数の18~19%と非常に少ないのが現実である。酪農への新規参入への要件として、意志と信念、資金、農地、住宅、施設と機械、経営能力と技術力が言われる。伴侶の存在も望ましい。この中で属人的な要件を満たすヒトは多い。問題はその他の要件であるが、それは入植希望地の環境に大きく左右される。「研修住宅の用意と安価な貸し付け」、「乳牛導入資金やスタート資金の提供」、「利子補給」、「哺育センター、TMRセンター、コントラクター等地域施設の利用認可」、「農地の流動化」等について農協や自治体が積極的に取り組んでいる所では新規参入者が多いようだ。


4.外部支援の拡大


最後に、高齢化と規模拡大の中で考えねばならない人的な外部支援の拡大に触れたい。2つ挙げてみよう。①地域内からの支援人材の確保:規模の拡大によって農場では、臨時雇い、常雇いの両方で雇用労働依存が増加している。ここで大切な事として、他産業との比較優位性を保つことがある。そのために、就業規則、有給休暇、賃金、従業員教育、能力評価等について委細を定めておくことが必要となる。②外国人技能実習生:19年4月からは従来の3年間の技能実習生制度に加えて、新たに2年間の特定技能1号の制度が導入され、最長5年間の農業従事が可能となった。今後、新型コロナによる入国規制が解除されると、酪農への参入は多くなるであろう。監理団体を中心として所得の向上を始めとした待遇の改善、地域社会における共生、技術力の向上などについて、長期的な視野に立った計画と実践が日本社会全体に求められるようになるだろう。


(6回にわけて掲載)

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