全酪新報/2020年2月20日号

「Jミルク、担い手育成へ新メニュー」――生産現場の持続発展を後押し

2020-02-20

Jミルクは2月6日の事業説明会で、乳業者の拠出により今後5年間継続実施する酪農乳業産業基盤強化特別対策事業の2020年度の枠組み等について説明。来年度は担い手育成のための研修等を助成する「酪農持続可能性向上支援事業」などをメニューに新設した。従来の牛向けの支援から「人」を焦点に事業を展開し、酪農の持続的な発展を後押しする。なお、乳牛輸入への支援は今年度で原則終了し、その他メニューは拡充・組替する方針。

乳牛輸入への支援は終了


同事業は乳用後継牛や生産量の減少を背景に、乳牛の輸入を支援するメニューを中心に乳業者の拠出による支援策として2017年度よりスタート。昨年10月には、Jミルクが示した提言の具体的な推進に向け、同事業を5年間継続することを決めた。2020年度からは乳牛から担い手に向けた支援へと焦点をおいた上で、家族酪農と都府県を中心とした対策を講じ、酪農乳業の持続可能性を強化する方針で事業を組み替える。


次期事業の枠組みは、①酪農生産基盤強化総合対策事業②国産牛乳乳製品高付加価値化事業③持続可能性強化事業――の3点。このうち、①の事業においては「酪農持続可能性向上支援事業」を新設し、担い手育成のための研修等への支援をはじめ、食育活動や環境美化活動、実態調査や検証・評価、優れた事例の創出・普及などの取組を後押しする考えだ。


このほか、①の事業においては民間コンサル等の活用や情報インフラの整備など内容を拡充。実施中の供用年数延長促進対策、乳用牛育成基盤強化対策、生乳増産対策特任事業等は組み替えて継続する方針。


なお、同事業のメインだった乳牛の輸入への支援策をはじめ、増頭分を助成する「乳用後継牛増頭対策」、生産者団体等が自ら企画提案する独自の対策を支援する「提案型生産基盤対策」は今年度で終了する。


最終年度を迎える同事業に関して前田浩史専務は、地域における家族経営の重要性をはじめ、グローバル化の進展、環境問題といった社会環境の変化をふまえて事業の継続を決めたと説明。その上で、同事業に対する乳業者の理解・協力を呼び掛けるとともに、生産者組織に対しては「どのような運用を行うことが現場の課題解決に繋がるか、意見・アイデアをいただきたい」と協力を求めた。今後、4月開催予定のブロック会議も通じて要望等を積み上げ、具体的な実施要領等を作成していく方針。

お断り=本記事は2月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「2017~19年度乳牛輸入実績、2千頭以上」――Jミルク、生産量の維持・拡大に寄与

2020-02-20

Jミルクはこのほど開いた事業説明会の中で、3カ年計画として行われてきた「酪農乳業産業基盤強化特別対策事業」の2017~19年度の実績(計画、見込み含む)を公表した。このうち乳用牛の輸入等を支援する乳用牛資源緊急確保事業では、豪州から3年間で2077頭の乳用牛を輸入し国内に供給。取組を通じ、生乳生産量の維持・拡大に大きく寄与した。このほか、育成基盤強化に向けた支援による支援預託能力増を図るなど、現場の基盤維持・強化を後押しした。


同事業は、①酪農生産基盤強化事業②国産牛乳乳製品高付加価値化事業③生乳需給安定事業――の3つの事業で構成。①はさらに3つの事業からなるが、うち乳用牛資源緊急確保事業では、1頭当たり13万9千円を助成し、全農、全酪連、熊本県酪連の3実施主体で計2077頭を3年間で輸入・供給。17~18年度には北海道の2戸(14頭)、都府県の244戸(1372頭)に供給した。


また、①の事業として育成負担の軽減や自家育成の促進等を目的とした生乳増産対策特認事業では、2年間で2275万円を全酪連に助成し、若齢預託施設を拡充。延べ8126頭分の預託増加につながった。


①の事業のうち、6つのメニューで構成する地域生産基盤強化支援事業においては、▽基盤強化のために行う研修会等への支援として計21団体、4281万円を助成▽生産者団体等が自ら企画提案する独自の対策を3年間で17件採択、4823万円を助成▽育成基盤拡大に対する支援として3年間で2億357万円助成し、延べ13万4千頭の預託能力を増加――などの成果を上げている。


また、後継牛の出生を後押しする乳用後継牛増頭対策に総額4億2千万円(平均助成金額10万3千円)。経産牛の生存率向上を支援する供用年数延長促進対策に総額4310万円(同1万2千円)を助成した。


このほか、②の国産牛乳乳製品高付加価値化事業では、乳業連合や地域の牛乳協会等を対象に助成。中小乳業の課題解決に向けた手引書の策定、HACCP導入等を目的とした研修会などに対して支援を行った。

「畜舎建築基準緩和へ議論開始、コスト削減や簡素化等必要」生産者委員――「安全面、地域差に考慮すべき」建築委員

2020-02-20

農水省は2月4日、都内で「新たな畜舎建築基準等のあり方に関する検討委員会」の第1回会合を開き、畜舎における同基準の緩和に向けて検討を開始した。昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画に基づくもので、会合では議論の方向性について協議。生産者委員からはコスト削減や建築確認申請の手続き簡素化等に向け、対象となる畜舎の面積要件の緩和を求める意見があった一方、建築関係者からは、安全面や地域による環境の差を考慮して慎重に議論を進めるべきとの意見が上がった。


現行の畜舎における規制では、畜舎の規模や立地に応じて建築確認申請等の手続が必要。畜舎規模としては、木造500平米超、その他(鉄筋等)200平米超の場合、建築確認及び完了検査が必要となるが、工期短縮やコスト抑制の観点をはじめ、省力化の推進により畜舎内での人の滞在時間が減少していること等を背景に、生産現場においては現行基準の緩和を求める声は多い。


会合では、生産者委員から畜舎等の建築基準の緩和を求める意見が相次いだ中で、山氏徹委員(全国肉牛事業協同組合理事長)は畜産業における家族経営の重要性を強調。その上で「建築確認がいらないよう、500平米から1千平米へと緩和してほしい。そうすれば、家族経営が十分にやっていけるし、後継者を育てる環境もできる」として、酪農も含めた畜舎建築基準の緩和を要望した。


また、酪農家の藤田毅委員(㈲フジタファーム代表取締役)は、建築関係者が会合で説明した大規模牧場における平屋立て牛舎の事例に対し「環境により牛舎の面積はある程度変わるべきだ。そうした面も考慮した上で緩和すべきだ」として、環境対策をふまえた議論の必要性を強調した。


一方で、建築関係の委員からは「(積雪など環境ごとの地域差をふまえ)全国一律での緩和は難しいと思う。また、緩和した場合の運用の仕方については明確にしていただきたい」(森暢郎委員、日本建築家協会副会長)といった意見をはじめ、制度運用にあたり型式適合の畜舎等(スマート牛舎)の活用を指摘する声など、安全面に考慮して慎重に議論すべきとの意見が多く上がった。今後、2020年上期までの結論を目指して検討を進めていく方針。

「2019年農林水産物・食品輸出、1兆円目標達成できず」――牛乳・乳製品は2割増と好調

2020-02-20

農水省は2月7日、19年農林水産物・食品の輸出実績(速報値)を公表。同期の輸出額は前年同期比0.6%増の9121億円となり、7年連続で過去最高額を更新したが、19年の達成目標額1兆円には879億円の不足で目標額には届かなかった。水産物、林産物は前年より減少したものの、農産物は3.8%増加し、畜産物も大きく伸長。牛乳・乳製品は、粉乳や消費期限の長いLL牛乳の増加を背景に、前年を2割上回る185億円だった。


今回の結果について農水省は、世界市場や経済状況の不調が影響したと説明した上で「4月1日より立ち上がる農林水産物・食品輸出本部を中心に、輸出先国における放射性物質の規制緩和の撤廃等を進めることが必要。また、新規開拓先の獲得に向けたイベント出展などプロモーション活動も積極的に推進する必要がある」とした。


なお、「輸出額1兆円」の目標は当初、20年に設定されていたが、16年8月に閣議決定した「未来への投資を実現する経済対策」において、19年に前倒しでの達成を決めた。一方、19年に目標到達するには18年(9068億円)より10.3%の増加が必要という状況にあった。


19年の畜産物輸出額のうち、牛乳・乳製品は20.5%増の184億4500万円。粉乳等は112億6254万円(27.6%増)、牛乳・部分脱脂乳は13億7869万円(25.0%増)となり、18年よりも大きく増加。一方、チーズ・カードは11億2942万円(3.1%減)と減少した。


輸出先を見ると、粉乳はベトナムへの輸出が最上位で、台湾、香港と続き、上位3カ国の変動はない。チーズ・カードは昨年まで香港の輸出が多かったが、19年は香港が1位で順位が逆転。牛乳・部分脱脂乳は香港向けが最も多かった。

「家畜改良増殖目標、ゲノミック評価推進へ」――性判別技術の更なる拡大も

2020-02-20

農水省は1月30日、食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、酪肉近と合わせて3月末に策定される新たな家畜改良増殖目標(第11次)のうち、乳用牛に関して3つのポイントを提示。従来の手法では改良が難しかった繁殖性を含む長命連産性について、ゲノミック評価を活用した牛作りを推進する。また、効率的に乳用牛を活用するため、性判別技術のさらなる普及を推進。体型については、省力化に資する搾乳ロボットに適合性の高い体型を分析し、改良を進める方向性を示した。


そのほか、乳量は増加させる改良の方向性を維持し、泌乳持続性の高い乳用牛の改良も推進。乳成分については、現在の成分率を維持しつつ、乳脂肪分率目標は夏季における暑熱の影響を鑑みて下げるべきか、生産者の努力と意欲を促すためにも維持すべきか、今後も検討する必要があるとしている。


第11次目標は、畜産農家の高齢化や後継者不足により、省力的な飼養管理下でも高い生産性を発揮できる改良を進める。

「大槻和夫酪政連委員長が死去」――茨城県酪連会長、全酪連副会長

2020-02-20

酪政連委員長や茨城県酪連会長、ひので酪農協組合長、全酪連副会長、関東生乳販連副会長などを務める大槻和夫氏(70歳)が2月14日、死去した。告別式は2月23日12時30分より、茨城県石岡市の石岡地方斎場で執り行われる。


大槻氏は、茨城県酪連会長(2004年~)、全酪協理事(05年~)全酪連副会長(06年~)、関東生乳販連副会長(09年~)、酪政連委員長(18年~)などを務めていた。酪政連での政治運動をはじめ、様々な立場において業界をけん引し、日本酪農の発展に大きく尽力した。

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