全酪新報/2019年12月20日号

「20年度畜産物価格、輸送費増で集送乳調整金上げ」――交付対象数量5万トン拡大

2019-12-20

自民党は12月11日、農林・食料戦略調査会、農林部会、畜産・酪農対策委員会の合同会議を開き、2020年度の加工原料乳生産者補給金単価は据え置きの1㌔当たり8円31銭、集送乳調整金は5銭引き上げの2円54銭、総交付対象数量は5万㌧拡大の345万㌧とする政府案を了承した。集送乳調整金はドライバー不足など生乳の輸送コスト上昇により増額し、交付対象数量は今後の生乳増産への期待を表した。また、関連対策では、酪政連など生産者団体から要望が強かった酪農ヘルパー事業など中小家族経営向けの事業拡充や多発する自然災害に対応する事業を措置することを決めた。

加工補給金単価は据置き


加工原料乳生産者補給金単価については、初任牛価格や流通飼料費が減少傾向で推移する一方、労働費や農機具費が上昇傾向で推移したため、搾乳牛1頭当たりの生産費は増加した。しかし、搾乳牛1頭当たりの乳量が増加したため、3年間の変動率方式で算定した結果、2019年度と同額の8円31銭となった。


一方、集送乳調整金については、加工原料乳の集送乳にかかる輸送コストは増加傾向にあるが、加工原料乳の集送乳量が減少したため、輸送効率が悪化。算定した結果、1㌔当たり5銭引き上げの2円54銭とした。


さらに、総交付対象数量については、バター需要の増加を背景に、国産乳製品需要を満たすためにも乳製品向け生乳を拡大する必要があるとし、5万㌧増の345万㌧とした。


畜産物価格・関連対策を決めるため、畜産・酪農対策委員会は3回の会合を開いたほか、北海道、北関東、中国地方、九州の現地視察と意見交換を実施。その中で、喫緊の課題である弱体化が続く都府県の生乳生産基盤を維持・強化するためにも、中小の家族経営への支援や、畜産クラスター事業における規模拡大要件の緩和、働き方改革を進める上で必要不可欠な酪農ヘルパー制度の充実を求める意見が続出。そのほか、都府県に3万頭分あると見られている牛舎の空きスペースを活用した増頭対策、全国的に更新時期にある家畜排せつ物処理施設の整備への支援なども大きな課題に挙げられた。集送乳調整金の算定に当たっては、生乳の輸送コストが上昇している状況に十分な配慮を求める声もあった。


赤澤亮正委員長は今回の決定について総括する中で「先生方からいただいたご指摘や熱い思いを受け、畜産・酪農対策の拡充を図り、着実に実施する」と強調した。


合同会議終了後、酪政連の大槻和夫委員長は「価格・数量とも満足。酪農ヘルパー対策や家畜排せつ物処理施設整備への支援など関連対策もしっかりと措置していただいた」と感想を述べた。その上で「発電機の導入支援を含め、災害対策は今後の酪農には絶対条件。災害によって離農することがないよう、停電時の対応をしっかりと考えなければならない。また、価格・関連対策とは別に、今後は指定団体機能の強化を求める必要がある」と述べた。


なお、畜産物価格等の決定に当たり、自民党農林・食料戦略調査会、農林部会、同委員会の連名で、中小規模経営の後継牛増頭支援に取り組むことなども決議した。

お断り=本記事は12月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「関連対策、牛舎空きスペース活用を支援」―― 酪農ヘルパー事業はメニュー拡大

2019-12-20

2020年度畜産物価格決定に伴い、農水省は関連対策(ALIC事業)を発表した。酪農関連では、中小酪農経営を対象とした牛舎の空きスペース活用のための支援と酪農ヘルパー事業のメニューを拡充した。また、楽酪GO事業、地域で計画的に非常用電源を導入する際の助成も継続する。


空きスペース活用支援は、中小酪農経営対象事業のメニューに増頭するために必要なスタンチョンや仕切り用パイプなどの整備を追加。酪農ヘルパー事業は就業前後の研修や外国人材確保・育成への取り組みに対して新たに支援する。

「畜産部会、全会一致で妥当と答申」――補給金・調整金単価・対象数量など

2019-12-20

農水省は12月11日、食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、20年度の加工原料乳生産者補給金を1㌔当たり8円31銭、集送乳調整金を2円54銭、総交付対象数量を345万㌧などとする答申案を全会一致で「試算に定めるところは妥当」と答申した。


江藤拓農相の代理で答申書を受けた伊東良孝副大臣は「委員からいただいた意見についても、その趣旨に従い、畜産行政推進の参考にさせていただきたい」と述べた。

「新基本計画・酪肉近の議論開始」――2019年の酪農情勢を振り返る

2019-12-20

相次ぐ台風被害など多くの自然災害に見舞われた2019年。昨年末のTPP発効に続き、2月には日EU・EPAが発効、20年1月1日より日米貿易協定も発効と国際化が大きく進展した。国内酪農では都府県の生乳生産基盤弱体化を背景に、飲用需要期の移入量は過去最高量となったが、輸送上の限界にきていることからも、安定供給に向けた抜本的な対策が急務となっている。次期酪肉近の策定をめぐる論議や自民党の会合においても、都府県基盤の維持・強化が最重要課題とする意見が相次ぐなど、酪農乳業界として大きな「転換点」を迎えた1年となった。


酪農会館竣工で関係団体集結、Jミルクが生乳の増産見通す


▽1月


8日 乳業関係13団体が新年賀詞交歓会を開催。席上、日本乳業協会の宮原道夫会長が挨拶の中で都府県基盤強化の重要性を強調。


9日 ホクレンは19年度の用途別原料乳価格の交渉結果を公表。飲用向けなど3用途で都府県と同水準の1㌔当たり4円値上げで決着。乳製品向けは全て据え置き。


15日 日本酪農発展の拠点として18年末に竣工した酪農会館に酪農関係団体が結集。全酪協会、酪政連が業務を開始。


30日 農水省は19年度のカレントアクセス分の輸入枠数量を決定。バターを18年度比7千㌧増の2万㌧、脱脂粉乳を同7千㌧増の2万㌧とした。


30日 Jミルクは19年度の需給見通しを公表。北海道の乳牛頭数増を背景に、生乳生産は4年ぶりに増産、牛乳消費も堅調に推移するとの予測を示した。


▽2月


1日 日EU・EPA協定が発効。同日には駐日EU代表部が記念イベントを開き、日本側、EU側の代表が双方の発展に期待感を示した。


4日 全酪協が昨年末に竣工した酪農会館の竣工式と落成祝賀会を開き、関係者や国会議員等が多数出席。


8日 農水省が18年の輸出実績を公表。9068億円の12.4%増で、6年連続で過去最高を更新。


25日 全酪連とグループ会社・関係団体が酪農会館で業務を開始。


▽3月


1日 Jミルクは臨時総会で事業計画等を承認。乳用牛の輸入等を支援する独自の財源で実施中の特別対策事業では、19年度より担い手育成に向けた地域の取組も助成対象に追加。


6日 酪政連は通常総会で、生産基盤強化に向けて酪農ヘルパーや後継牛対策を重点事項として要望する方針を決定。


20日 中酪が臨時総会で増産・維持を目指す中期生乳需給安定化対策を引き続き実施する方針を決めた。


28日 食料・農業・農村政策審議会企画部会が新たな基本計画の見直しに向けて議論を開始。2名の酪農家を招いて現状や将来展望など現場の声を聴取。


大手乳業4年ぶりの価格転嫁、全酪協会新会長に砂金氏就任


▽4月


1日 大手乳業3社は乳価上昇や物流コスト等の上昇を要因に市乳類の出荷価格を値上げ。業界一体的に行うものとしては4年ぶりの価格転嫁。


15~16日 日米物品貿易協定交渉が米国でスタート。12日の自民党の会合では、TPPの譲許内容が最大限との意向を取りまとめた決議を全会一致で承認。


22日 訪日旅行客の急増に伴う違法畜産物の摘発件数増をふまえ、動物検疫所は違反事案への対応を厳格化。家伝病の侵入防止へ水際対策をさらに強化した。


▽5月


9~12日 新潟でG20会合を開催。米国やEU諸国など主要20カ国が参加し、検疫強化へ各国間で連携強化を図ることを盛り込んだ宣言も採択。


17日 規制改革推進会議が畜舎建設に関する規制の見直しに向け、農水省等からヒアリングを実施。20年度上期メドに新規立法も視野に議論を進めることを決定。


20日 19年春の叙勲・褒章では、酪農関係から長坂喜義氏(群馬県)が旭日双光章、坂主正氏(栃木県)が黄綬褒章を受章。


24日 第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会実行委員会が総会を開き、会場計画や防疫衛生計画、出展ブースの設置などの基本計画を承認。


30日 次期酪肉近の策定をめぐり、畜産部会では4名の酪農関係者から意見を聴取。家族経営への支援策の必要性をはじめ、担い手不足への対応、改正畜安法の是正やヘルパー要員の確保など多くの要望が上がった。


31日 Jミルクが19年度の需給見通しを公表。生乳生産は4年振りの増産、牛乳需要も堅調に推移すると見込んだ。


▽6月


1日 中央酪農会議が牛乳月間恒例の六本木牧場を今年も都内で開催。全国から多くの酪農家が応援に駆け付けた。


12日 自民党酪政会の会合で、酪政連は中小の家族経営にきめ細やかな支援、ヘルパー確保に向けた新たな支援策の拡充などを要望。


24日 全国酪農協会が開いた総会・理事会で、新会長に砂金甚太郎副会長(全酪連会長)が就任。


28~29日 G20大阪サミットが開催。環境問題や持続可能性等に関する首脳宣言を採択し、小規模農家を含めた家族農業の重要性も明記。


28日 家畜改良事業団が18年度乳用牛群能力検定成績速報を公表。北海道、都府県ともに305日乳量で過去最高を記録。


新制度問題で農水省が通知、日米交渉、TPP水準で合意


▽7月


2日 農水省が19年2月1日現在の畜産統計を公表。酪農家戸数は1万5千戸で700戸減った一方、乳牛飼養頭数は4千頭増だった。


9日 飼料用トウモロコシ等に被害を与えるツマジロクサヨトウが国内で初めて発生を確認。まん延防止へ農水省は緊急対策を実施。


11~12日 全国酪農青年女性会議と全酪連が鹿児島県で酪農発表大会を開催。農林水産大臣賞に池田さん(鹿児島・霧島市)が選ばれた。


16日 農水省が取りまとめたチーズ需給表によると、国内のチーズ総消費量は4年連続で過去最高を記録。国産割合は低下傾向が続く。


18~30日 各地域の指定団体が総会を開催。その中で、各長が改正畜安法の運用上で問題となっている二股出荷に対してそれぞれ苦言・課題について言及した。


31日 Jミルクが19年度需給見通しを発表。生乳生産量を下方修正し、需要期の飲用需要はさらにひっ迫を見込んだ。


▽8月


1~2日 米国で日米貿易交渉の閣僚協議を開催。早期の成果達成へ一定の進捗がある一方、乳製品など農産品の交渉は膠着状態続く。


6日 農水省は18年度の食料自給率を公表。カロリーベースは37%で過去最低値を記録。


7日 ホクレンが創立100周年機に記者説明会を実施。生乳に関する説明の中で共同販売の重要性を改めて強調。


21日 畜産部会で次期酪肉近策定へ生乳流通関係者から意見聴取。生産者側からは達成可能かつ酪農家を後押しする生産目標数量の設定を求める声が上がった一方、乳業者側は現行水準以上の800万㌧を目標に提示。


26日 日米両政府が協議を進めてきた日米貿易交渉が大枠合意。


30日 農水省は20年度農林水産予算として前年度比18.2%増の2兆7307億円を要求。担い手確保へ継承等を支援する方針を提示。


▽9月


3日 改正畜安法上のいいとこ取りをめぐり、農水省が是正に向け生産局長名で通知を発出。契約遵守など改めて内容の周知徹底を呼びかけた。


6日 次期計画策定へ企画部会での議論が本格化。1月に骨子案、3月に答申予定。


5~10日 日本列島を横断した台風15号が9日には関東に直撃し、特に千葉県で長期大規模停電や断水により酪農にも甚大な被害が発生。


11日 第4次安倍第2次改造内閣が発足。新農相に江藤拓氏(衆・宮崎2区)が就任した。


26日 日米貿易協定が最終合意。農産品関税はTPP協定の水準を超えない範囲で新たな米国枠を措置しない形で決着。乳製品もTPP同水準、脱粉・バターなど協定から除外した品目を除き、関税撤廃年や削減率の変更はなかった。


脱粉追加輸入枠6千トン削減、相次ぐ台風で酪農被害甚大


▽10月


1日 8~9月の台風被害等をふまえ、農水省が支援対策を取りまとめた。昨年の北海道地震への支援をベースに、乳房炎対策の一部を拡充。


4日 脱粉の余剰傾向を加味し、追加輸入判断で脱粉追加輸入枠を2万㌧から6千㌧削減することを決定。バターは2万㌧で据え置いた。


10日 次期酪肉近の策定をめぐり行われた畜産部会の中で、日本乳業協会・西尾啓治会長が今後の生乳供給の在り方へ言及。飲用向けが不足する需給を鑑み、最需要期は加工乳等による代替供給でまかなう案も提示。


12~13日 台風19号が関東、東北地方を通過。東日本を中心とした記録的豪雨により、牛舎水没や乳牛の死亡など甚大な被害が発生。


22日 天皇陛下が内外に即位を宣明される即位礼正殿の儀が挙行。酪農界を代表して全酪連の砂金甚太郎会長も参列。


23日 Jミルクが酪農乳業が一体となって初めて取りまとめた提言を発表。持続可能な産業を目指し、今後の酪農乳業のあるべき姿や政策支援の方向性等を示した。


30日 チーズ工房等の製造者が協会設立に向けた説明会を実施。国産チーズの振興を目的に一般社団法人として年内に設立、来年4月より事業を開始する運び。


31日 宮崎市内で第15全共の1年前イベントを開催。2日には都城市でプレ全共を実施。


▽11月


3日 農水省が19年秋の勲章・褒章の受章者を公表。酪農関連では、赤松省一氏(香川県高松市)、池田喜久子氏(滋賀県東近江市)に旭日単光賞。大森敏雄氏(青森県六ヵ所村)が黄綬褒章を受章。


14日 19年度農林水産祭式典が開かれ、畜産部門では㈲石川ファームが天皇杯に選出。


20日 日本酪農青年研究連盟が千葉・成田市で酪農発表大会を開催。北海道別海町の藤田さんが黒澤賞を受賞。


▽12月


12日 20年度の畜産物価格・酪農関連対策が決定。補給金は現行を維持。集送乳調整金は5銭値上げ、総交付対象数量は5万㌧引き上げの345万㌧に決まった。

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