全酪新報/2019年8月1日号

小動物獣医師増え産業動物獣医師は全体の11%に-30年前はほとんど差なし

2019-08-01

酪政連がこのほど開いた中央委員会では、農水省が獣医事をめぐる情勢を説明した。それによると、2016年末時点の獣医師数は4万名弱で、そのうち、産業動物獣医師は全体の11%に対し、小動物獣医師は約4割。30年前はほとんど差がなかったが、産業動物獣医師は横這いからやや減少で推移している一方、小動物獣医師は年々増加している。また、近年は女性産業動物獣医師の比率が高まっている。国は将来的に産業動物獣医師が不足しないよう、担い手確保に取り組んでいる。

お断り=本記事は8月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

家族経営の発展を目指すSFCの活動-清水池事務局長(北大大学院講師)に聞く

2019-08-01

家族経営の発展を目指し、農業者や研究者などが集まったネットワーク組織「スモール・ファーミング・コミュニティ(SFC)」が今年2月に結成された。現在、会員は酪農家3名を含む25名。国連が2019年から28年を「家族農業の10年」に設定したように、家族農業の再評価が世界で進んでいる中、酪農・畜産の持続性の観点から活動の意義が注目される。事務局長を務める北海道大学大学院農学研究院の清水池義治講師にインタビューした。


――今年2月16日に立ち上げに至った問題意識は。


清水池 国の現在の農業政策の大きな流れをみると、大規模経営の優遇と言うのが際立っている。例えば、小規模な家族経営は今のままだと存続が難しいとの危機感があった。会員の中では農業は大規模経営だけでなく、中小の家族経営がしっかり残っていかないと出来ないという共通認識があり、家族農業の今の時代における意義を社会で広く共有するための団体を作ろうと今回立ち上げに至った。


――酪農では生乳生産の確保や国際化に対応するために、畜産クラスター事業などを活用した大規模化が進んでいるが、リスクもあるのでは。


清水池 ヨーロッパでも何度か酪農危機を経験してきているが、2008~09年は、ドイツでは旧東ドイツの大規模な経営体が労働者に賃金が払えなくて破産した。逆に一番強かったのが南のバイエルン州などの、比較的小規模な家族経営の酪農地帯であった。規模は都府県と同程度位だが、家族経営主体でかつ、畑作などの複合経営のところが多い地域だ。雇用者に労賃を支払う必要がないので、危機の際に強かった。


――日本では。


清水池 日本では政策的な資金を投入して北海道などに、多くのTMRセンターが補助金を受けて作られた。その現状をみると、減価償却の積立が出来ていないところが結構多い。設備の更新時に自己資金で更新できなくなる問題が将来出てくる。持続可能性から非常に危うい。


今回、畜産クラスター事業によって規模拡大しているメガファームを見ていると、同じことが起こってしまうのではと懸念している。特に日本では大規模経営になるほど購入飼料に依存する経営が多くなる傾向がある。そのため、必ずしも生産コストが下がっていない。どの程度、政策担当者が認識しているのか心配している。


――乳価(収入)が引き上げられてきた環境も大きいのでは。


清水池 10年前を振り返ると、現状の乳価水準は予想できなかった。しかし、この水準が今後も継続すると考えた経営や投資にはリスクもあると考えた方がよい。需給問題も当然乳価に関係するし、予測するのは難しい。変動するような時代になってくることも出てくるだろう。


加えて国際化で乳製品の輸入が増加してくると乳価の下落圧力が強まってくる。現状では乳製品の内外価格差が大きくなっているので、今後とも楽観できるような状況にはない。


――その一方で、家族経営と大規模経営の対立構造を前提としていない考え方というが。


清水池 大規模経営(酪農ではメガ、ギガファーム)を否定しているわけではなく、むしろ入っていただき議論したい。役割分担があると思うからだ。北海道と都府県との関係でも同様だが、メガファームは生乳生産量を維持するために必要な存在。その意義を否定するものではない。


ただし、政策の支援の対象が大規模経営に比重が高まる中で、メガファームだけで農村社会が成り立つのかと危惧を覚えている。やはり家族経営の酪農家の役割がある。北海道でいえば、家族経営の酪農家は全てではないが、購入飼料に依存する割合が少ない経営をしている。労働力でも雇用せずに家族の労働力と自分たちで作った飼料でやっている。従って家族経営は外部変動に非常に強い。


ドイツ、オランダなどのヨーロッパの酪農国でも企業的な経営と家族経営を比べると、特に乳価や資材も含めて価格変動が大きいことから法人経営の脆弱性が指摘されている。


――農村地域の維持・活性化の観点からも必要では。


清水池 農村の多様性の意味で、多様な規模や多様な経営があった方が良い。家族経営であっても普通のやり方、有機とか放牧みたいな環境に負荷をかけないやり方、最近は6次産業化のような牛乳・乳製品の加工分野への進出とか、グリーンツーリズムの一環で民泊を取り入れるとか色々な経営が存在することに意味がある。そのことによって農村社会が魅力的になっていく。


仮に大規模経営しか存在しない農村社会というのは、想像してみれば分かるが、魅力に乏しい。


――同様なことは、地域的にみて北海道と都府県酪農のバランスのとれた発展が必要では。


清水池 北海道と都府県との生乳生産のかい離は大きくなる。北海道から生乳を移送して、そのかい離分を埋めるという話になるが、やはり都府県酪農も頑張らなければいけない。牛乳は消費地の近くの都府県で作られるのが基本的な考え方だ。北海道から生乳なり牛乳なりを運ぶ物流インフラが近年、非常に脆弱になってきている中で際限なく移出できるわけではないことを自覚しなければいけない。


移出が本当に難しくなったらLL牛乳とか還元乳みたいな話になってしまうかもしれない。都府県酪農は多くの消費者に新鮮な牛乳を届ける義務があるということを政府としても認識していただき、都府県酪農をそれなりのボリュームで維持していくことを考えないといけない。


――国の政策支援の方向性について思うことは。


清水池 現在の国の政策は改正畜安法も含めて、国際競争も含めて競争を強化していくという流れになっているが、乳製品部分だけを支えて間接的に飲用を支えるというのがこれまでの補給金の考え方。今の都府県の状況からは、それだけでは、もう持続可能な生産基盤を維持できないと思っている。


例えば考え方として集送乳調整金をベースに都府県にも出すという考え方も検討の余地はあるのではないか。飲用乳地域の酪農経営に出すという考え方だ。財源という大きな課題はあるが、例えば、長期的傾向として乳製品向けの生乳が減っていくだろう。


そうすると補給金の対象になる生乳が少なくなっていくことを意味するので、その分は都府県対策として使えないかという一つのアイデアはあるのではないか。


《メモ》SFCはもともと道内で活動していた北海道合鴨水稲会が母体。同会が解散後に改めて酪農・畜産農家なども含めた幅広い組織として創設。現地研修会や会報の発行、ネットワーク活動などを行っている。将来構想として消費者会員や交流も視野に入れている。詳細はホームページ

全酪連総会で砂金会長が抱負「生産基盤維持・拡大に一丸」

2019-08-01

全酪連の砂金甚太郎会長は7月25日、都内で開いた19年度通常総会の冒頭あいさつの中で、中期3カ年計画の2年目となる今年度の事業について「搾乳後継牛の確保や酪農家戸数維持への取り組みなどを柱として、引き続き酪農生産基盤の維持・拡大のために役職員一丸となって取り組む」と抱負を述べた。


その上で「酪農を取り巻く厳しい環境下にあっても、酪農の明るい将来に期待している方々が意欲を持ち、経営を持続できるように、また、次代を担う後継者が希望を持って経営を継承できる環境作りに貢献することが求められている」と強調した。


また、昨年施行された改正畜安法に触れ「一部で安定的な生乳販売体制を揺るがすような生乳流通の新たな流れがあり、今後の影響を注視していく必要がある」と懸念を示した。

農水省、獣医学生に修学資金貸与-出身地域での就業誘導

2019-08-01

農水省は地域における産業動物獣医師を確保するため、19年度の獣医療提供体制整備推進総合対策事業を拡充。出身地域での産業動物獣医師への就業を誘導するため、高校生向けと大学生向けに修学資金を貸与する。


同事業は新たに修学資金を貸与するメニューを拡充。農水省によると、獣医系大学への聞き取りをした結果、大学の所在地以外の都道府県に就職した学生が約8割を占めていた。その実態を踏まえ、高校生向けとして地域における産業獣医師への就業を志す獣医系大学への地域枠入学者(獣医系大学が設定する選抜枠)に対し、入学時に納付する費用と月額18万円を上限に貸与する。


また、獣医系大学在学中の学生に対しても、私立18万円、国公立10万円を上限に貸与。ともに国と就業予定先が修学資金として2分の1ずつ補助する。


修学資金は一定期間、産業獣医師として就業予定先で勤務すれば返還は免除する。

全酪連札幌支所乳牛産地情報-初妊価格強含み、秋分娩で導入需要再度上昇

2019-08-01

全酪連札幌支所は8月1日現在の北海道乳牛産地情報を公表。それによると、初妊牛価格は75~85万円で強含み。10~11月分娩が中心となるため、夏分娩を回避するために一時的に相場が下がった6月、7月と比べて価格が上昇することが予想される。道内外の規模拡大農家やメガ・ギガファームの導入需要が回復し、庭先購買価格は強含みで推移すると思われるが、資源は各管内とも例年並みに確保できる状況にある。


また、育成牛(10~12月齢)は43~53万円でやや弱含み、経産牛は50~60万円でやや強含みと見ている。


相場は血統登録牛中クラスの庭先選畜購買による予想のため、市場購買とは異なる(各管内の動向は全酪新報8月1日号3面に掲載)。

連絡先・MAP

一般社団法人 全国酪農協会
所在地 〒151-0053
東京都渋谷区代々木1-37-2
酪農会館5階
電話番号 代表(総務部):03-3370-5341
(業務部・共済制度)
     :03-3370-5488
(指導部・全酪新報編集部)
     :03-3370-7213
FAX番号 03-3370-3892
アクセス JR・都営大江戸線ともに
「代々木駅」から徒歩1分
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