全酪新報/2019年6月10日号

「家庭経営への支援策が必要」――農水省畜産部会、酪肉近策定に向け意見聴取

2019-06-10

農水省は5月30日、省内で食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、2030年度を目標とする新たな酪肉近(酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針)の策定に向け、4名の酪農関係者から経営上の課題や政策要望等を聴取した。現場からは、労働環境の整備や後継者及び担い手不足への対応、酪農ヘルパー要員の確保、改正畜安法による乳価や需給への影響など数多くの課題が上がるとともに、家族型酪農経営が今後も経営を継続していけるよう国側へ支援・対策を求めた。同方針は今秋をメドに諮問した後に議論を進める方針だ。

お断り=本記事は6月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「いいとこ取り」への対応求める――畜産部会委員らから続出

2019-06-10

5月30日に開かれた畜産部会では、施行2年目を迎える改正畜安法をめぐり、酪農関係者や委員からその影響を懸念する声が続出した。国側への要望に関する意見の中で、『いいとこ取り』への対応に加え、指定団体機能の堅持等が不可欠であることを改めて強調した。


酪農関係者からの聴取の中で、㈱久慈平岳牧場(岩手県)の田村英寛氏は「地域柄、中山間地の酪農地帯が多く、集送乳も経費が多くかかることから、個人が好き勝手に販売することは牛乳の安売りに繋がる。需給緩和の時は皆でぐっと耐えてきたことで一定の乳価が維持できた。現在はいいとこ取りが話題になっているが、是正すべき所は是正してほしい」と要望した。


さらに、㈱加茂牧場(千葉県)の加茂太郎氏は「将来において生乳の需給状況に問題が生じたり、(TPP等の)外的要因によって生乳が販売しにくくなった際に、団体の交渉力の低下にならないか不安がある」と懸念を示した上で、業界の団結力が失われないよう、ルール等の明確化など制度の適切な運用に配慮を求めた。


また、酪農家で委員の須藤泰人委員(㈲ロマンチックデーリィファーム代表取締役)は「(時勢を背景に)当然だと思う反面、無差別になることで価格の低迷を招くと危惧しており、酪農家はもっとそこを考える必要がある。自由は当然勝ち取るべきだが、ルールを守るために苦慮する中で知恵を絞らなければならない時期にきている」と指摘。一方で、直近の生乳生産量や後継牛の増頭傾向を背景に、需給緩和の可能性に関しても警鐘を鳴らした。

「農水省は乳製品輸入枠変更せず、脱粉・バターとも2万㌧」―― 水野課長「在庫量は十分」

2019-06-10

農水省は5月31日、今後の乳製品需給を見通した結果、バターと脱脂粉乳の各月末の在庫量は必要水準を満たすことから、19年度の輸入枠は今年1月に定めたバター2万㌧、脱粉2万㌧の輸入枠数量を『変更しない』との方針を発表した。牛乳乳製品課の水野秀信課長は「変更せずとも十分な在庫量が確保できると判断した」としている。


農水省は17年度より輸入の運用を改善。次年度の輸入枠数量を1月に設定した上で、年度開始された5月、9月にその後の情勢を検証し、追加輸入を行うかどうか判断している。今年の1月には、バターは業務用の需要増加により、18年度比7千㌧増の2万㌧に設定。一方、脱粉は一定の在庫を確保しているため、同7千㌧減の2万㌧とした。


水野課長は現時点で「今後も(バター・脱粉の)需給は安定するだろう」と見解を示し、必要在庫数量を満たしているため、5月については「バターは輸入枠数量2万㌧を変更しなくても、十分な在庫量が確保できると判断した」と説明した。


バター・脱粉それぞれの必要在庫量については、バターは「翌月の最大消費量の2.5倍」を基準に試算。脱粉は実需者の要望を踏まえ、毎月末の必要在庫量を一定の6万㌧としている。


同日、Jミルクが発表した需給見通しによると、全国の生乳生産量は前年度を上回り、バター・脱粉向け生乳が増加することにより、いずれも生産量は増加する見込み。


19年度のバター期首在庫量は前年度比1.6%増の2万3600㌧。生産量については、2.4%増の6万1300㌧。輸入売渡量2万2500㌧と合わせ、供給量は8万3800㌧となる見通し。


それに対し、推定出回り量(需要量)は7万9500㌧で2.0%増。供給量が需要量を4300㌧上回るため、期末在庫量は18.1%増の2万7900㌧と見込んだ。


一方、脱粉の期首在庫は2.0%減の6万5400㌧。生産量は12万3200㌧で2.6%増の見通しで、供給量は輸入売渡見込み1万1200㌧と合わせ、13万4400㌧となる。需要量は13万5600㌧で1.3%減。脱粉は需要量が供給量を1200㌧上回るため、期末在庫量は1.9%減の6万4200㌧となる見通し。

「生乳4年ぶり増産見込む」Jミルク――需要期の飲用ひっ迫懸念

2019-06-10

Jミルクは5月31日、直近4月までの実績データを用いた19年度の生乳及び牛乳・乳製品の需給見通しを公表。それによると、全国の生乳生産量は北海道における増産により、15年度以来、4年ぶりの増産となる見込み。しかし、都府県の飲用需要は満たせず、年間を通じて道外移出は増加。飲用需要期には生乳ひっ迫が懸念される(閏年修正後の数値を採用)。


全国の生乳生産量は732万㌧で前年同期比0.5%増の見込み。地域別では、北海道は405万1千㌧で2.1%増。通年で前年を上回り、特に需要期の9月は地震による生乳生産・流通の混乱の反動もあり、前年を約9%上回る見通し。


一方、都府県は326万9千㌧で1.4%減。7月と2月を除いて前年を下回り、引き続き基盤強化が課題となる。


19年度の用途別処理量では、飲用等向け処理量は408万3千㌧で前年同。特に9月は3.1%増、来年2月には3.6%増と例年を3~4%超える処理量の見込み。


一方、乳製品向けに関しては、318万9千㌧で1.2%増。うち脱粉・バター等向けについては、151万9千㌧で2.4%増の見通しで、脱粉・バターの生産増加に期待が寄せられる。


道外移出6%増


都府県では、生乳供給量324万5千㌧に対し、飲用牛乳等向け処理量は349万6千㌧で、需要が供給を上回るため、北海道からの移入量は増加。19年度は前年度を5.8%上回る52万1千㌧必要と見られ、北海道への依存は依然として続くとみられる。


移入量は年度を通じてほぼ前年超えの見通しで、7月に関しては約10%下回るが、8月から10月にかけては5万㌧を超える量が必要。特に、9月は6万㌧の生乳が必要になると予測している。

「酪農組織の大きな改革必要」――酪政連会合で全酪連・砂金会長

2019-06-10

全酪連の砂金甚太郎会長は5月29日、酪政連が開いた中央委員会の意見交換の中で、散見される部分委託の問題に関して「国会議員を要請して回ると、今後、酪農組織は大きな改革をしないと、農家は離れてしまうと指摘する議員もいる。そこには、各指定団体のCSや集乳の合理化といった意味が含まれるだろう」とした上で「酪農家戸数が1万5千戸を割る中、もう一度日本の酪農を見つめ直し、大きな改革をせざるを得ない可能性がある」と強調した。

「中酪が牛乳月間恒例イベント、六本木牧場オープン」――U字工事が盛り上げる

2019-06-10

6月の牛乳月間のキックオフイベントとして、中央酪農会議は6月2日、東京・港区の六本木ヒルズアリーナに毎年恒例1日限りの「六本木牧場」をオープン。酪農への理解醸成と牛乳・乳製品の消費拡大をPRした。六本木牧場は今年で6回目となる体験型のイベントで、全国から12名の酪農家が応援に駆けつけた。当日は家族連れなど7700人が来場し、大盛況だった。


人工芝が敷かれた会場広場には乳牛のオブジェを設置するなど、のどかな牧場風景を再現。栃木県出身のお笑い芸人「U字工事」が牧場長に就任し、日本の酪農や国産牛乳・乳製品の魅力を伝えた。

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