全酪新報/2019年3月20日号
「ソフト系チーズの関割数量、国産の生産拡大と両立で」――農林記者会勉強会で農水省
本紙など農林・食品関係の専門紙で構成する農林記者会は3月15日、省内で酪農・畜産分野でのTPP11と日EU・EPAの影響と対策などをテーマに、農水省の担当官を招いて勉強会を開催。牛乳・乳製品関連は金澤正尚乳製品調整官、食肉分野は冨澤宗高食肉需給対策室長が講演した。金澤調整官は日EU・EPAで合意したソフト系チーズの関税割当について、国内の消費が伸びていることを考慮した上で、国産の生産拡大と両立していく考え方で枠数量を設定したことを説明。また、4月以降の飲用乳価値上げについては、製品価格とそれに伴う消費動向を注視した上で「適正価格で販売できるかが2019年度の大きな課題」と述べた。
お断り=本記事は3月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「乳価値上は酪政連活動の功績」―― 自民酪政会の森会長が大会・デモ行進等評価
3月6日の酪政連総会後に開催された酪政連と自民党酪政会との懇親会には、衆参両院から酪政会会員の国会議員が多数出席。来賓挨拶した酪政会の森英介会長は4月からの飲用乳価値上げについて「酪政連の大変な奮闘の賜物。昨年11月の総決起大会やデモ行進など、様々な活動が積み重なった功績だ。私ども自民党酪政会として、これからも酪農の発展のために力を尽くして参りたい」と変わらぬ支援を約束した。
懇親会の冒頭、大槻和夫酪政連委員長は総会の中で多くの発言が挙がり、議論が白熱したことを説明。従前の課題である戸数減少について触れ、「減少を食い止めなければならないが、どうしても離農する人はいる。だからこそ、残った人が『酪農を選んで良かった』と活気を持ち、酪農に勤しめるための取り組みを展開していきたい」と全国で一体となった活動を継続することの重要性を語った。
また、来賓出席した髙鳥修一農林水産副大臣は、TPP等発効に関して「今後は国際競争の激化が考えられる。家族型経営の声にもしっかり耳を傾け、安定的な酪農経営の継続のため邁進していく」と抱負を述べた。
そのほか、伊東良孝酪政会事務局長は2018年9月に発生した胆振東部地震について触れ、「2日間にわたり停電が起き、バルクや搾乳器などが動かず、結果相当量の生乳が廃棄された。災害に強い対策をしていかなければいけない」と述べた。
懇親会の会場には、北海道・旭川市江丹別町の青いチーズや熊本県の阿蘇小国ジャージー飲むヨーグルトなど各地の乳製品も並んだ。
2月20日現在の酪政会の会員数は、衆院議員118名、参院議員52名、合計170名。
「馬瀬口全国酪農協会長が札幌で酪農会館の竣工報告」――関係者の智恵と力を結集
全国酪農協会(馬瀬口弘志会長)は3月8日、札幌市内で19年度北海道地区酪農講演会を開催。道内の酪農共済取り扱い団体の幹部職員ら約100名が出席した。冒頭、主催者挨拶した馬瀬口会長は昨年末に竣工した酪農会館について「皆様方の知恵と力を結集することで、完成させることが出来た。酪農が衰退し多くの仲間が離農せざるを得ない環境が続く中で、今一度原点に戻り、酪農家が力を合わせ、声を揃えて政策を求めてゆくための出発をすることが出来た」と酪農会館建設事業が完成のうちに終了したことを報告した。
さらに「北海道も都府県もしっかりと手を携え、衰退感をぬぐえない現状をなんとしても打破し、農業の原点は酪農にあるということ、血と汗を流して作り上げた農地を次代に渡す責任があるという原点のもと、皆さんの負託に応える組織であらねばならない」と今後の抱負を述べた。
「関東生乳販連がNHK前広場で理解醸成活動」――酪農家と学生が参加
関東生乳販連は3月9日~10日の2日間、東京・渋谷区の代々木公園とNHKホール前広場、NHKみんなの広場ふれあいホールで行われた「ふるさとの食 にっぽんの食全国フェスティバル」にブースを出展。関東生乳販連管内の酪農家10名と学生ら合わせて25名の協力のもと、模擬搾乳やジェラート販売などを行い、来場者に対し酪農の理解醸成に努めた。初日は天候に恵まれ、販売を予定していたジェラートが3時間足らずで完売するなど大盛況だった。
関東生乳販連は消費者への酪農理解促進を目的に毎年出展。会場では恒例となる牛の模型を使った模擬搾乳のほか、バター作り体験を実施したほか、酪農家自らがクイズや飼料の実物、牛の体やカルシウム、飼料について工夫をこらして来場者へ説明し、酪農の理解醸成を促進。さらに、交牧連関東ブロックの会員9牧場のジェラート960個を特別価格で販売。1日目は晴天の上に気温も高く、開始3時間で初日分500個が完売した。
イベントに参加した酪農家の加茂太郎さん(千葉県・㈱加茂牧場)は「酪農や牛に全く関わりのない方々に少しでも酪農と触れ合うきっかけや入口ができる」と消費者交流の重要性を述べ、「メスしか乳を出さないなど基本的なことを知らない方もかなりいる。だから入り口のさわりだけでも広められるのは良い」と語った。
さらに、加茂さんはイベントに参加するにあたってのポイントとして「あまりに難しい話をしてしまうと人が来なくなってしまう。だからクイズや実物を使った説明など五感に訴えて刺激する。そうして酪農を身近に感じてもらいたい」と話した。
同イベントは地産地消や食育の重要性を伝える目的でNHKやJA全中等が主催しているもの。毎年多くの来場者で賑わう。会場では全国各地の食材や農産物が販売され、酪農関係では群馬県・ミルク工房タンポポ(ラブリーファーム長坂牧場)の飲むヨーグルトや千葉県・近藤牧場がスイーツを販売した。