全酪新報/2018年11月10日号

「全国の生乳生産予測、やや下方修正」Jミルク――北海道は回復傾向へ、都府県も明るい兆し

2018-11-10

Jミルクは10月23日、2018年度の需給見通しを公表した。好調が続いていた北海道の生乳生産量は、地震・台風により9月単月では4.6%減。その後の生乳生産の大幅減が懸念されたが、徐々に回復に向かう。前年割れは続くが、年度を通じると前年を上回る。一方、都府県は減少が続くが、暑熱対策の取り組みなどもあり、前回見通しよりも減少幅は縮小した。その結果、全国の生乳生産量は0.5%減とやや下方修正した。都府県は未経産牛頭数の増加もあり、Jミルクは「今後に明るい兆しが見え始めている」としている。消費面を見ると、牛乳はほぼ前年並みで推移する。

お断り=本記事は11月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「新制度における生乳販売契約」―農水省がパンフレットで遵守求める

2018-11-10

2018年4月に新たな加工原料乳生産者補給金制度がスタートしたが、一方的な契約破棄などの相談が寄せられていることを受け、農水省牛乳乳製品課は10月31日、生乳取引における販売契約の遵守を周知徹底するパンフレットを作成した。また、同日付で指定団体等の第1号事業者、乳業者に直接生乳を販売する酪農家などの第2号事業者に対し、関係者間でパンフレットの有効活用を求める通知を発出した。パンフレットは契約遵守を推奨する文章のほか、年間販売契約の重要性や契約締結後は事業者双方に契約を遵守する義務があること、契約違反により自ら不利益を被る可能性があるといったポイントを掲載している。


牛乳乳製品課によると、新制度がスタートした4月以降、事業者の一方的な契約破棄といった様々な相談が寄せられたことから、一度結んだ契約を遵守する義務について再度関係者へ周知徹底する必要があると判断した。パンフレットの作成と通知発出について牛乳乳製品課は「生乳取引契約を結ぶ意味と制度の内容を確認していただき、事業者双方が合意した上で次年度の契約を結んでいただきたい」と説明した。

「TPP11は12月30日に発効」――オーストラリアが国内手続き完了

2018-11-10

政府は10月31日、オーストラリアがTPP11協定の国内手続きを完了したことにより、TPP11は12月30日に発効すると発表した。茂木敏充TPP担当相は会見で「大筋合意から1年を置かずに発効時期が確定したということは、極めてスピーディーに物事を運ぶことができたと思っている」と述べた。


TPP11は17年11月にベトナム・ダナンで大筋合意。協定は参加11カ国のうち、6カ国が国内手続きを完了した旨について、寄託者であるニュージーランドに通報した60日後に効力を生ずると規定されている。日本は7月に国内手続きを完了した。

「集送乳ローリーの燃料免税措置など要望」―酪政連・大槻委員長が与党に

2018-11-10

自民党は11月6日、農林・食料戦略調査会、農林部会などの合同会議を開き、19年度の農林・食品関係税制改正に向けて農業関係8団体からヒアリングを実施。このうち、酪農団体を代表して酪政連の大槻和夫委員長は、軽油引取税の課税免税措置の恒久化、集送乳ローリーに対する軽油免税措置などを強く要望した。関係団体からの聴取をふまえ、要望事項の取りまとめを幹部議員に一任。15日までに財務当局へ提出し、要望実現へ調整を進める。


会合の中で大槻委員長は軽油引取税に関して「牛乳は集送乳を繰り返しながら最終的に消費者に届く代物なので、運送料がものすごくかかる」と重要性を強調。北海道の震災や台風等による酪農への影響もふまえ、免税措置へ配慮を求めた。


このほか、酪政連は▽農家所有トラックの軽減措置の創設▽不動産取得税の軽減措置の恒久化▽青色申告制度利用者への特典拡充▽就農時の贈与税措置対応と拡充――などの改正も合わせて要望した。


会合にはJA全中の中家徹会長も出席し、来年5月を期限とする組織改革について、組織変更に伴う税制措置への適用を要望。また、中央畜産会は「生産資材価格の引下げ及び畜産物の流通加工構造の改革のために必要な税制措置の延長」とする要望書を提出した。

「苦境乗り切れば明るい未来に」―東大・鈴木教授が鹿児島で講演

2018-11-10

東京大学大学院の鈴木宣弘教授は、鹿児島県酪政連が10月19日に開いたらくのう講演会で「我が国酪農の展望について」と題して講演した。その中で鈴木教授は、自由貿易の拡大や指定団体制度改革など、酪農家に不安を与える動きがある一方、将来的に世界の牛乳・乳製品需給がひっ迫することが見込まれる状況を説明した。その上で「国民の命を守る生産者としての誇りを持ち、苦境を乗り切ることが、必ずや明るい未来につながる」と強調。参加者からは「明日から頑張る元気が出た」との声が挙がった。講演の内容を紹介する。


日EU・EPAでのチーズの実質的全面関税撤廃、TPP11(米国抜きのTPP)での11カ国への米国枠も含めた脱脂粉乳・バター輸入枠の供与に加えて、「TPP以上」の日米FTAの交渉入り、そして、国内的には生乳流通の自由化。酪農は「クワトロパンチ」にみまわれている。


こうした将来不安もあり、すでに都府県を中心とした生乳生産の減少が加速しており、「バター不足」の解消どころか、「飲用乳がスーパーの棚から消える」事態がいつでも起こり得ると警鐘を鳴らしていたが、北海道地震により、一気に顕在化した。


消費者はチーズが安くなるからいいと言っていると、「ごめん、今日は国産牛乳が売ってないの」と子どもに言わなければならない「重大な国民の命の危機」が目前に迫っている。消費者や小売店は牛乳を特売品にせず、北海道でも都府県でも頑張っている酪農家・農家を適正な価格で支えることが、子どもの命と健康を守るために不可欠だということを、今回の危機を契機に、今こそ気づかなくてはいけない。


カナダの牛乳は1ℓ 300円で、日本より大幅に高いが、消費者はその価格に不満を持っていない。私の研究室の学生のアンケート調査に、カナダの消費者から「米国産の遺伝子組み換え成長ホルモン入り牛乳は不安だから、カナダ産を支えたい」という趣旨の回答が寄せられた。生・処・販のそれぞれの段階が十分な利益を得た上で、消費者もハッピーなら、価格が高くても皆が幸せな持続的なシステムではないか。「売手よし、買手よし、世間よし」の「三方よし」が実現されている。政府の政策が、それをしっかりバックアップしている。


我が国のように、「買い叩いてビジネスができればいい」、消費者も「安ければいい」とこんな「今だけ、金だけ、自分だけ」の「3だけ主義」を続けて、しわ寄せを乳業メーカーや生産サイドに集中して、農家がやめてしまったら一番困るのは国民である。みなで泥舟に乗って沈んでいくのだと国民が自覚しないと手遅れになる。


いま頑張っている日本の酪農家は、国民の食を守って奮闘してきた「精鋭部隊」として、ここで負けるわけにはいかないし、負けることはない。消費者が動かないと嘆いてはいけない。「動かすのは我々だ」「自分たちがホンモノを提供し、国民の命を守り、環境を守って、日夜奮闘している」ということをしっかりと消費者に伝えて、消費者を動かそう。


人に、環境に、生き物に優しい酪農経営の価値を消費者が共感し、そこから生み出されるホンモノに高い値段を払おうとするような消費者との強い絆が形成されるなら、規模が小さくても高収益を実現できる。


新大陸型農業に対し、規模拡大だけで闘ったらひとたまりもない。規模の大小は「優劣」ではなく「経営スタイルや経営思想が違う」のであり、多様な経営がその特色を生かして持続しうるし、現に持続している。


長期的には世界の牛乳・乳製品需給はひっ迫基調をたどり、日本が乳製品を「買い負け」する日も遠くないと見込まれる中、日本の酪農家への期待と使命はさらに増してくる。


いまこそ、自分たちが国民の命を守っている誇りを忘れずに、強い意思を持って踏ん張って、乗り切っていくことが、必ずや自身の経営の明るい未来にもつながる。

「酪政連の新副委員長に岐阜・朝日修氏」――10月25日

2018-11-10

酪政連は10月25日に開いた中央委員会(書面)で、退任した井上久副委員長の後任に、朝日修中央委員(岐阜県)を選任した。

壹岐定憲氏が旭日単光章を受章――2018年秋の叙勲

2018-11-10

農水省は11月3日、18年秋の叙勲受章者を発令。酪農関係では、壹岐定憲氏(71歳、宮崎・元西都農協組合長)が旭日単光章を受章した。また、同日付で18年秋の褒章受章者を発令。宮嶋望氏(67歳、北海道・農事組合法人共働学舎新得農場代表)、村越敏春氏(50歳、北海道・酪農業)がそれぞれ黄綬褒章を受章した。

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