全酪新報/2018年1月1日号

「2018年度酪農予算、楽酪事業半減も緊急対策で実質増加」―― 酪農経営安定対策は今年度並みに

2018-01-01

政府は12月22日、2018年度予算案を閣議決定した。農林水産関係予算は総額2兆3021億円で、50億円、0.2%減少した。そのうち、酪農経営安定対策はほぼ今年度並み。今年度から実施している楽酪事業(酪農経営体生産性向上緊急対策事業)は30億円と半減したが、政府が推進する酪農の働き方改革の一環として、農畜産業振興機構(ALIC)の酪農関連対策で楽酪事業の使い勝手を良くした新規事業に50億円を別途計上し、実質20億円の増額で決定した。そのほかの酪農関連予算に大きな変更はない。

お断り=本記事は1月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「関連対策の働き方改革で50億円措置」―― 施設補改修も利用可能に

2018-01-01

政府・与党は12月15日、2018年度の畜産物価格と合わせて関連対策(ALIC事業)を決定した。議論の焦点になっていた酪農の働き方改革の推進に向け、緊急対策として「酪農労働省力化推進施設等緊急整備対策事業」(50億円)を新たに措置した。これにより、省力化機器等の導入を支援する酪農経営体生産性向上緊急対策事業(楽酪事業、来年度予算30億円)では対応できなかった施設の補改修への支援も可能となった。そのほか、乳用後継牛の確保等を支援する酪農経営支援総合対策事業は、今年度比3億1千万円増額の43億8千万円を計上した。


来年度のALIC事業の総額は251億円で、前年度比50億4千万の増額。乳用後継牛の確保では①簡易畜舎整備、機器等の導入②乳房炎防止など供用期間の延長③ワクチンによる育成牛の事故率低減――などを継続して支援するほか、乳牛の地域内継承、育成牛の地域内流通の取り組みに1頭当たり3.2万円の奨励金を支払う。


さらに、酪農ヘルパー要員の確保や育成、傷病時等利用の負担軽減や利用組合の機能強化に加えて、来年度よりさらなる要員確保に向けて、酪農ヘルパーの認知度向上の取組等も支援内容に盛り込んだ。


また、牛舎スペース等が確保しにくい都府県で自家育成が困難な場合、来年度から広域的な外部預託に伴う輸送費や衛生対策の経費等に対し、1頭当たり最大6.9万円交付出来るよう支援を拡充した。優良乳用牛の導入に対する支援(1頭当たり4万円または5万円)は引き続き実施する。


そのほか、17年度に相次いだ台風上陸による粗飼料減収・品質低下への対策を延長。2億8千万円を計上した。

「楽酪事業と合わせて働き方改革推進」――畜酪・赤澤委員長

2018-01-01

自民党が12月14日に開いた会合で、畜産・酪農対策委員会の赤澤亮正委員長は来年度の畜産関連対策の概要を説明。その中で酪農の働き方改革に向けて「現場の生の声を聞いて労働負担の大きい酪農家の働き方改革を進めることが重要だと痛感した」とした。


その上で、新たに措置した緊急対策について「楽酪事業の使い勝手も良くなり、さらには都府県の生産基盤強化に資するという一つの答えが出せたと思う。楽酪事業と合わせて酪農の働き方改革を加速させたい」と述べた。

「全酪連1~3月期、配合価格㌧1800円値上げ」――糟糠類、海上運賃上昇で

2018-01-01

全酪連は12月22日、2018年1~3月期の牛用配合飼料価格を前期(2017年10~12月)に比べ、全銘柄平均1㌧当たり1800円値上げすると発表した。大豆粕など糟糠類価格の上昇が主な要因。主原料のトウモロコシのシカゴ相場は比較的安定している。一方、海上運賃は原油相場の上昇等により値上がり、今後は堅調な推移が見込まれる。


哺育飼料価格は脱粉やホエイなど国際乳製品相場の低下に伴い、1㌧当たり2万3千円値下げした。


また、JA全農も12月22日、同期の配合飼料価格を全国畜種総平均1㌧当たり約1500円値上げすると発表した。改定額は地域別・畜種別・銘柄別で異なる。

「ホクレン、チーズ向乳価4~5円値上げ」――その他は据置き、4月から適用

2018-01-01

ホクレンと大手乳業者等の2018年度用途別原料乳価交渉が12月12日に決着した。チーズ向け乳価を現行の価格より㌔4~5円と大きく値上げし、その他用途は原則据え置くことで合意したと発表した。チーズ向け乳価の値上げは2年連続。2018年4月1日取引分から適用する。


チーズ向けは生乳生産の増産や国内の乳製品需給の動向をふまえ、チェダーやゴーダなどハード向けは1㌔㌘当たり4円値上げ(税別、引き上げ率5.8%)、カマンベール等のソフト向けは5円値上げ(同、7.4%)する。飲用向けは全国連での決定に合わせて決めるが、脱粉・バター等向けや生クリーム等向けなど、その他の用途の乳価は据え置いた。


ホクレンの生乳受託販売委員会が全取引先140社のうち、道内で取引のある大手や中堅乳業者15社と合意したもの。今後、その他乳業者とも交渉し、全取引乳業者との合意を行う方針。

「軽油引取税、課税免除特例措置3年延長」――2018年度税制改正

2018-01-01

政府は12月22日、2018年度税制改正大綱を閣議で決定した。農林水産関係では、酪政連が要請していた軽油引取税の課税免除の特例措置は3年延長された。そのほか、公共の危害防止のために設置された施設または設備に係る課税標準の特例措置について、特例割合を見直した上、その適用期限を2年延長する(畜産事業場の汚水)。

「初妊価格横這い、85~95万円、資源前年並み、依然高止まり」――全酪連・乳牛産地情報

2018-01-01

全酪連札幌支所によると、2018年1月1日現在の初妊牛価格は85~95万円で横這い。資源は前年並みで、需要は昨年に比べて弱い。また、育成牛(10~12月齢)は52~62万円、経産牛は53~63万円で、ともに横這い。相場は血統登録牛(中クラス)の庭先選畜購買による予想。そのため、市場平均価格とは異なる。


1月の初妊牛は3~5月分娩腹が中心。道内の増産意欲は高く、主産地では軒並み前年を上回っており、初妊牛需要を支える状況になっている。昨年1年間の全酪連取り扱い初妊牛の平均価格は、最高月89万円、最低月83万円と大きな変動はなく、高値での横ばいで推移した。

「ロマンとやりがい、高収益の力強い日本酪農構築を考える」――代々木通信

2018-01-01

少し前の話になるが、昨年10月、地元高山市でデンマーク王国のフレディ・スヴェイネ駐日大使ご夫妻にお会いした。


高山に本社を置くある家具メーカーの敷地に、著明なデンマーク人デザイナー、フィン・ユール氏の邸宅が再現されている。この家具工房では、北欧のデザイナーとのライセンス契約による家具生産も行っている縁からだと思う。その邸宅自体、とてもシンプルながら洗練された意匠で、日本家屋とは明らかに異なる建物なのに、高山の山村風景にとても溶け込でいる。というか、そこだけがまるでデンマークのような風景になっている。昨年は、日本とデンマークが外交関係を結んで150周年にあたり、そのフィン・ユール邸においても記念式典が開かれることになり、高山市まではるばるお越しいただいたというわけだ。高山市長をはじめ地元を挙げて歓迎することになった。


デンマークの国土面積は九州とほぼ同じ、人口約565万人の小さな国ながら、乳製品や豚肉といった畜産物の生産国。デンマークの協同組合運動や酪農自体を学んだ人もいると思うが、酪農家を含め多くの日本人が親近感を持っている。私も2014年7月、デンマークの農場を視察したことがあった。そこで見たのは手入れの行き届いた牛舎、農機具、きれいな庭園風景。納屋には古い荷車や牛乳缶、昔のトラクターが大切に保管されていた。オーナーの酪農愛のようなものに、とても感動して帰ってきた。そんな親しみと気軽さから、フィン・ユール邸で開かれた「150周年記念パーティー」に、飛騨牛乳持参で参加した。


気軽に参加したつもりだったが、スヴェイネ大使は特に酪農に関心が高かった。私が酪農家と知るや話は盛り上がり、やがて質問攻めになった。


曰く、デンマークにおいても酪農家は高齢化が進み後継者確保が課題になっているが、岐阜、高山ではどうか。デンマークでは規模拡大により乳量を維持している。日本も同じと思うが、なぜデンマークや日本のような経済・文化が成熟した社会において、酪農から人が離れていくのだろうか、と。とても難しい質問で、私は即座には答えられなかった。


私は常に、酪農にはロマンとやりがいがあると主張してきた。もちろんそれだけでは生活できないから、少なくとも他産業並みかそれを上回る手取りがあってこそだと思う。


今、酪農家がそのような恵まれた状況にあるかといえば、必ずしもそうとはいえない。酪農家戸数の減少に歯止めがかからないという厳しい現実がある。


東京・代々木では、酪農会館の新築工事が1年後の竣工に向けて着々と進んでいる。新しい酪農会館は、情報と知恵を集めて議論し、力強い日本酪農を構築するための活動や政策提言の拠点となるものだ。酪農は、人と牛が頑張った分、きちんと儲かって、しかもロマンもやりがいもある仕事だと言えるのが望ましい。各地の酪農仲間が、そのように胸を張って言えるような状況に、変えていかなければならない。


歴史と伝統の畜産大国、デンマーク大使の質問「なぜ酪農から人が離れていくのか」はいまだに答えが分からないでいるが、とにかく日本の酪農家として歩み続けながら考えなければならない。


ところで、今回は年頭でもあるので、わが牧場の今年の目標を掲げて結びとしたい。家族も乳牛も病気知らず。意見や考えの細かい違いが多少あっても、それでもワイワイガヤガヤ話し合い、理解し合いながら、多少の困難も一致団結して乗り越える。ともに働き収穫することに喜び、ありがたみを感じる。そんな年になるように、心静かに願っている。(全国酪農協会会長・馬瀬口弘志)

連絡先・MAP

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所在地 〒151-0053
東京都渋谷区代々木1-37-2
酪農会館5階
電話番号 代表(総務部):03-3370-5341
(業務部・共済制度)
     :03-3370-5488
(指導部・全酪新報編集部)
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