全酪新報/2017年9月1日号
「2018年度の農水関係予算2兆6525億円要求」 ― 「楽酪事業60億円で継続求める」
農水省は8月30日、2018年度の農林水産予算総額2兆6525億円(15%増)とする概算要求を取りまとめた。酪農関連では、加工原料乳等生産者補給金などを含めた畜産・酪農経営安定対策は今年度並みの1763億円、今年度から実施している楽酪事業(酪農経営体生産性向上緊急対策事業)は継続するよう60億円要求した。鳥獣被害防止対策は捕獲の推進など大幅な増額を求める。日EU・EPA対策、畜産クラスター事業については、補正予算で確保する方針。
お断り=本記事は9月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
酪政連が政府・国会に予算要請――「楽酪」「クラスター」「後継牛対策」等
8月25日の合同会議に出席した酪政連の佐藤哲副委員長は「楽酪事業は働き方改革として、労働時間を短縮する観点から重要だ。畜産クラスター事業と合わせて事業の継続をお願いしたい」と農林関係幹部議員に訴えた。
酪政連は2018年度予算に関して、生産基盤強化のための後継牛確保対策、楽酪事業の事業継続と要件の緩和、自給飼料生産・利用拡大推進対策、畜産クラスター事業の拡充、酪農ヘルパー事業への支援継続、鳥獣被害対策の充実・強化、酪農後継者対策の充実、改正畜安法移行後の適正な運用、TPPや日EU・EPA対策の万全な実施――などを要請した。
北海道の未経産牛が増加、経産牛は全国的に減少 ― 農水省畜産統計
農水省がこのほど発表した畜産統計によると、2月1日現在の全国の乳用牛飼養頭数は132万3千頭で前年に比べ2万2千頭、1.6%減少した。そのうち、経産牛は85万2100頭で1万8900頭、2.2%、未経産牛は47万1千頭で3100頭、0.7%それぞれ減少した。経産牛は北海道・都府県ともに減少したが、未経産牛は北海道で増加、都府県は大幅に減少。全国の100頭以上を飼養する階層の頭数は、全体の4割以上を占めた。
地域別にみると、北海道は経産牛45万9400頭で2.4%減少、未経産牛は32万頭で1.7%増加した。
一方、都府県は経産牛39万2700頭で1.8%、未経産牛は15万1千頭で5.2%それぞれ減少。特に未経産牛の減少幅が大きい。
成畜の飼養頭数規模別戸数の分布状況は、全国では30~49頭(3960戸)が最も多く、次いで50~79頭(3420戸)、1~19頭(3100戸)、20~29頭(2270戸)となっている。地域別にみると、北海道は50~79頭(2160戸)が最も多く、次いで100頭以上(1310戸)、30~49頭(1290戸)と続く。北海道で50~79頭規模の戸数が前年より20戸増えた。
一方、都府県は1~19頭(2820戸)が最も多く、次いで30~49頭(2680戸)、20~29頭(1980戸)、50~79頭(1260戸)だった。
全国の飼養規模別の頭数の分布状況をみると、20~29頭における階層が7万5600頭と4.4%増加した。構成比率をみると、100頭以上の階層が52万5600頭と0.3ポイント増加し、頭数全体の41.3%を占めている。
「初妊牛依然高値もやや落ち着く」 ― 今後は導入活発化で再び上昇の見込み
全酪連札幌支所によると、9月1日現在の初妊牛価格は85~95万円で横這い。年度当初は90~100万円まで高騰したものの、9月の初妊牛相場は高値ながらもやや落ち着きを取り戻している。一方、道内外の大型牧場を中心に導入の活発化が予想されるため、初妊牛相場は再び上昇すると見ている。育成牛(10~12月齢)は55~65万円で弱含みだが、経産牛は55~65万円で横這いの見込み。
9月は11~12月分娩腹が中心。黒毛和種の交配率は上昇しているが、雌雄選別精液の普及の高まりから頭数は例年並みを予想。しかし、今後のF1初生牛等の相場次第では、初妊牛相場はもみ合いになることも想定される。
日本の畜産ネットワークが齋藤農相を表敬訪問――佐藤酪政連副委員長ら
全国117の畜産団体で構成する日本の畜産ネットワークは8月25日、第3次安倍第3次改造内閣で農林水産副大臣から昇格した齋藤健農相を表敬訪問した。齋藤農相は「TPP、EU対策をしっかりと実施し、影響を最小限にとどめ、なおかつ攻めることが重要だ」などと述べた。
表敬訪問には、酪政連の佐藤哲副委員長、全国肉牛事業協同組合の山氏徹理事長、日本養豚協会の志澤勝会長、中央畜産会の姫田尚副会長らが出席。会談の中で齋藤農相は「党の農林部会長で2年、副大臣で2年お世話になった。部会長の時にはTPP、副大臣の時には日EUをどうするのかといった大変な仕事が多かったが、誠実に真剣に対応してきたと思っている」と述べた。
肉用牛は前年比2万頭上回る ― 飼養戸数は5万100戸、3.5%減
農水省の畜産統計によると、肉用牛飼養戸数は全国で5万100戸、前年に比べて1800戸、3.5%減少した。一方、飼養頭数は249万9千頭で2万頭、0.8%増加した。1戸あたり飼養頭数は49.9頭で、前年に比べ2.1頭増加した。規模別の飼養戸数は、1~9頭(2万3400戸)が最も多かった。
「いきいきフォトコンテスト」特選に山縣千晶さん(おかやま酪農協) ― 酪青女全国大会で審査・決定
全国酪農青年女性会議と全酪連が北海道・札幌で開いた第46回全国酪農青年女性酪農発表大会(7月13~14日開催)で「第8回酪農いきいきフォトコンテスト」の審査・表彰が行なわれ、大会に出席した520名による投票の結果、岡山県津山市の山縣千晶さん(おかやま酪農協所属)の作品「どうぞ!」が特選に輝いた。応募総数は昨年より13点多い53点で、特選のほか5点が入賞作品に選ばれた。
山縣さんの作品は、山縣さんが酪農を営む羽出木総合農場(久米南町)が直営するジェラートショップ「LATTE」で開かれるイベントの中で、孫の小夏ちゃん(撮影当時1歳)が子牛にミルクを与えている場面を山縣さん本人が撮影したもの。山縣さんは作品について「面白くて良い場面だと思った。たまたまカメラが近くにあって、撮影したら良いものが撮れた」と思わずシャッターを切った当時の状況を話してくれた。
この度の特選受賞を受けて山縣さんは「(特選を受賞するとは)全然思っておらず、出展出来れば良いかなぐらいの気持ちだった」と喜びつつも素直な気持ちを語った。
大会では、山縣さんの作品がスクリーンに大きく映し出され、笑顔でミルクを与える小夏ちゃんと子牛の微笑ましい情景に、会場からは大きな拍手と盛大な歓声が上がった。