全酪新報/2017年6月10日号
「需要期の道外移出は2割増」Jミルク需給見通し――生乳生産減少で、飲用は前年並み
Jミルクは5月25日、直近のデータを用いた2017年度の生乳と牛乳・乳製品の需給見通しを公表した。全国の生乳生産量が前年度を下回る一方、牛乳類の需要は、ほぼ前年並み、はっ酵乳も引き続き増加傾向で推移する見通し。そのため、需要期には都府県で生乳が不足し、道外移出量は前年度よりも約2割増加すると見ている。
お断り=本記事は6月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「北海道、1番草の生育3日早い」――降水量少なく、気温は高め
北海道農政部の調べによると、6月1日現在の牧草(1番草)の生育状況は、平年に比べて3日ほど早い。草丈は55.6㌢で、平年比で5.9㌢長い。根室は平年より6日、檜山、十勝、釧路は4日、石狩、渡島、上川、オホーツクは3日、後志、宗谷は2日早く、胆振、日高、留萌は平年並み。
農政部の発表によると、期間中は高気圧に覆われて晴れた日が多く、夏日を記録した日もあった。気温は平年よりも高く、降水量は少なく、日照時間は平年並み。5月全体としては、高気圧と低気圧が交互に通過した影響で、天気・気温の変動が大きかった。
道内平均の生育状況は平年よりもやや早いが、留萌管内は平年並み。天塩町の酪農家、農協関係者によると、雪解けは早かったが朝晩は寒く、降水量が少なかったこともあり、草丈の伸びが悪いことから、収量を心配する声もある。
「グラスフェッド(牧草飼育)で販売展開」――フォンテラジャパンが戦略発表、販売量3年間で4割増目指す
世界的な乳業メーカーで、ニュージーランド(NZ)最大の企業であるフォンテラの日本法人・フォンテラジャパン(東京都港区、斎藤康博社長)は5月30日、東京都内で事業戦略発表会を開催した。NZ酪農の最大の特長であるグラスフェッド(牧草飼育)を前面に打ち出し、日本における乳製品の販売拡大を狙う。斎藤社長は「持続可能性、社会的責任というブランドで日本社会に貢献したい」と意気込みを語った。販売数量は2020年までに現在の13万㌧から4割増の18万㌧を目指す。
フォンテラはNZ国内の酪農家1万500戸が所有する協同組合企業で、国内の取扱乳量は2200万㌧。一企業としての取扱乳量は、世界で第2位を誇り、140カ国に年間乳製品ベースで世界の貿易量の3分の1以上を占める400~450万㌧輸出している。
一方、日本法人のフォンテラジャパンは、前身会社が1982年に業務を開始。直近2016年7月の売上高は約650億円、販売数量は乳製品ベースで約13万㌧だった。
斎藤社長は「売上高は為替レートと世界の乳製品市場価格で左右される。よって、数量を重視している」との考えを示した上で「2年前の売上高は約800億円だった。昨年は円高と世界価格が下落気味だったため、約2割減少したが、数量については、最低でも今期、来期とも5%増やせると思う。2020年までの3年間で約4割増の18万㌧を目指している」と説明した。
販売拡大を狙うに当たり、フォンテラの強味である環境保全に厳しい中での飼養管理や研究・開発力、工場の厳しい品質管理のほか、ほぼ1年を通じて放牧するグラスフェッドを前面に打ち出す。このほど、世界的に展開するため、ロゴマークを作成した。
日本市場に関する考え方について斎藤社長は「ヨーグルトなどの機能性が高まっている。その機能性を追求し、高まる健康志向に対する要望に応えたい」とした上で「東京オリンピック・パラリンピック、ラグビーワールドカップが開催され、スポーツがブームになる。そこで、乳タンパクを原料にしたスポーツニュートリション(栄養補助食品など)のニーズが高まる。ヨーグルトも含めて、機能性乳製品市場はますます拡大する。その原料を支えているのが我々の仕事。しっかりと供給したい」と述べた。
一方、供給する側の状況について斎藤社長は「世界的に乳製品需要は年々高まっており、今後もアジアを中心に需要は強まる。そのことを考えると、しっかりと日本に乳製品を供給する方策を考えなければならない」とした上で「NZのフォンテラ社内では、地域ごとの調達競争が激しくなっている。社内で日本の乳製品市場の魅力を宣伝しないと、商品が集まらない状況にもなりかねない」と懸念を示した。
「農水省内で乳和食PR」――大野高志畜産部長がみそ汁調理
農水省は5月31日、省内の消費者の部屋で管理栄養士・料理研究家の小山浩子氏を講師に招き、乳和食の調理実演会を開いた。乳和食は普段の調理で使う出汁や調味料の他に牛乳を加えることで、おいしく減塩できる和食の調理法。6月の食育月間にあわせ、5月29日から6月2日までの間、食と農林水産業について学べる展示会を開催し、その一環で乳和食をアピールした。
小山氏が紹介したメニューは、乳和食の基本レシピであるカッテージチーズ、水の代わりに乳清を使った乳清ごはん、鮭のミルク塩麹漬け焼き、ミルクだし巻き卵、半量分のみその代用に牛乳を使った塩分半分のみそ汁など6品。小山氏の指導を受けてみそ汁を調理した大野高志畜産部長は「牛乳を料理に使うことに無理がない」とコメントした。
農乳協の新会長に橋本氏(日本酪農協同社長)が就任
全国農協乳業協会は、6月5日に都内で定時総会を開き、任期満了に伴う役員改選では、幅田信一郎会長(大山乳業農協組合長)が退任、新会長に橋本光宏氏(日本酪農協同㈱社長)が選任された。
総会後の懇親会の席上、橋本会長は「酪農に一番近い乳業メーカーとしての強みをどう出していくか、その課題に向かってチャレンジしていきたい」と抱負を述べた。
地域交流牧場全国連絡会の新会長に渡辺氏(北海道弟子屈町)
地域交流牧場全国連絡会は5月25日、都内で総会を開催。任期満了に伴う役員改選で、新会長に渡辺隆幸氏(北海道釧路管内弟子屈町、渡辺体験牧場)が選任された。
渡辺新会長は「私たち酪農家にしかできない、素晴らしい牛乳の生産や、教育ファーム活動、そして牛乳・乳製品の製造・販売を行ない、消費者に届ける。そして、色々な人と会話し、交流していく。全国の酪農仲間と携わりながら友達を作っていくという意味で素晴らしい組織。心強い新メンバーのもと、皆さんに支えていただきながら頑張りたい」と抱負を述べた。