全酪新報/2017年6月1日号
「脱脂粉乳の輸入枠2万1千トン拡大」 ―ヨーグルトの生産好調が要因、バターの需給は安定
農水省は5月25日、今年度の脱脂粉乳の輸入枠を2万1千トン拡大すると発表した。脱粉を使用したヨーグルトの生産が増加傾向にあり、今後もさらに増加が見込まれるため。一方、バター需給は安定して推移する見通しから、輸入枠は変更しない。農水省は1月下旬に今年度(2017年度)の脱粉・バターのカレントアクセスを含めた輸入枠をそれぞれ1万3千トンと発表した。その時点では、今年度内は十分に対応できると見ていたが、その後の情勢を検証して5月と9月に判断することとしていた。
お断り=本記事は6月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
日本乳業協会・川村会長が国家貿易の運用方針で要望―「ユーザー心理にも考慮を」
日本乳業協会の川村和夫社長(㈱明治社長)は、バター・脱粉等の需給について言及し、3月下旬に開示された入札市場では、脱粉の落札価格が高騰している状況にあることを説明した。「国は現在の国内の在庫数量だけで輸入判断するのではなく、今後の生乳生産見通しと、見通しを受けたユーザーの心理も考慮して今年度の国家貿易の運用について考えてほしい」と国への適切な対応を求めた。同協会が5月19日、都内で開いた総会で述べたもの。
また、川村会長は2016年度の牛乳・乳製品の消費動向について「ヨーグルトやチーズ等の需要が大きく伸張し、減少傾向が続いていた牛乳も昨年の年末以降は、下げ止まり感も出ている」と述べ、需要が活況であることを説明する一方で、生乳生産や酪農家戸数の減少が続く現状に対して乳業者としても懸念を示した。
規制改革推進会議が生乳流通改革などを首相に答申 ― 「これからが重要」と大田議長
規制改革推進会議は5月23日、生乳流通改革などを含めた規制改革に関する第1次の取りまとめを安倍晋三首相に答申した。大田弘子議長(政策研究大学院大学教授)は「今残っている規制は、構造的に難しいものばかり。農業に関する規制改革は全て難しかった」と総括した。その上で「これからの詰めこそが重要。しつこく粘り強く取り組んでいく」との考えを示した。規制改革推進会議は昨年9月に発足。その後、約9カ月間にわたって調査・審議を進めてきた。同会議は首相の諮問機関として2019年7月31日まで設置される。
答申を受けた安倍首相は「アベノミクスがスタートして4年半になるが、規制改革が一丁目一番地であることに変わりはない。旧来の仕組みにとらわれず、柔軟に規制や制度を見直すことが強い経済を作る。引き続き大胆な制度改革に精力的に取り組んでいただきたい」と委員にさらなる改革を求めた。
会見の冒頭、大田議長は「規制改革の重要な目的は、制度を利用する側の選択肢を拡げること。農業分野では、加工原料乳を生産する酪農家が出荷先を自由に選べ、どこに出荷しても補給金を得られるようにした。そのことが消費者の選択肢を拡げることになる」と説明した。
農業ワーキンググループの金丸恭文座長(フューチャー㈱会長兼社長)は、「今回答申した生乳流通の改革でバター不足が解消するのか」との問いに対し、「酪農家の自由な意思が反映できやすい制度であり、万が一足りなくなった場合は、現在よりも機動的に手を打つことにより、バター不足が解消することを期待している」との考えを示した。
「TPP11カ国で早期発効を目指す」 ― ベトナム・ハノイ閣僚会合で共同声明
自民党は5月26日、TPP総合対策実行本部を開き、米国を除いた11カ国によりベトナム・ハノイで開催されたTPP閣僚会合(5月20~21日)の結果について政府側が説明した。ハノイ会合では、米国のTPP復帰を促した上で、同時に11カ国での早期発効を目指すとする共同声明が発表された。
ハノイ会合において全ての参加国とバイ会談(2国間会談)を行なった石原伸晃経済再生担当相は「『米国が不参加では意味がない』という声を多く聞いた。バイ会談を行った結果、各国の状況や立場は様々だったが、TPPの意義を踏まえ、機運を失わないよう前へ進める必要があることは全ての参加国に共通していた」とした上で、「11カ国が結束を維持し、TPPの早期発効に向けた11カ国のコミットメントが正確に確認されたことに大きな意義があった」と話し、ハノイ会合で今後の大筋の方向性を打ち出せたことを報告した。
今後のスケジュールについては、日本政府初の主催により、7月に日本で首席交渉官会合を開催する方針。
「WTO事務局長が農相を表敬訪問」 ― 自由貿易の推進で連携を確認
WTOのロベルト・アゼベド事務局長は5月22日、今年末に開かれる第11回WTO閣僚会合を前に山本有二農相を表敬訪問した。会談の中でアゼベド事務局長は自由貿易の推進に向けて、日本との連携強化を図っていく姿勢を示した。
山本農相の歓迎を受けたアゼベド事務局長は「日本はWTOにおいて非常に重要なプレイヤーであり、リーダーであり続けている。貿易を支えるために、継続して改革していくには、さらなる協力と対話を強化していかなければならない」と述べ、自由貿易の推進における日本の役割の重要性を強調した。
また、安倍晋三首相も同日に表敬。安倍首相は「WTOの役割は、自由貿易が岐路に立っている今こそ極めて重要だ。日本としてもその役割を果たしていきたい」と述べ、自由貿易を推進していく方針を示した。
「北海道の乳牛産地情報、初妊牛相場はやや弱含み」 ― 育成牛は上昇、60~70万円に
全酪連札幌支所によると、6月1日現在の初妊牛価格は85~95万円でやや弱含み。4月より高値での横這いが続いていたが、5月の初妊牛相場では、やや落ち着きを取り戻している。育成牛(10~12月齢)は60~70万円、強含みで推移。一方、経産牛は50~60万円で、弱含みでの推移を見込んでいる
5月の初妊牛は8~9月の夏分娩が中心。春先の相場が高値で推移していたことから、夏分娩事故の損失リスクへの警戒感が高まり、都府県からの注文は例年より減少している。しかし、生乳生産は北海道でも前年割れが続くなか、前月に引き続き、道内外の大型牧場の導入意欲は依然として強い。
「今年も出現、六本木牧場14名の酪農家が参加」(中酪主催) ― 好天に恵まれ6500名が来場
6月の「牛乳月間」のキックオフイベントとして中央酪農会議は5月27日、東京・六本木ヒルズアリーナで1日限定の「六本木牧場」をオープンした。酪農への理解醸成と牛乳・乳製品の消費拡大が目的の体験型イベントで、今回で4年目となる。
当日は日差しが強過ぎず過ごしやすい一日で、6500人が来場。会場は家族連れなど多くの人で賑わい、イベントには全国から14名の酪農家が応援に駆け付けた。会場は牧場に見立てた人工芝が広場に敷かれ、6頭の牛のオブジェとともに伸びやかな風景を表現。乳牛の体や牛乳が届くまでのパネル展示、酪農に関するクイズラリーなどを通じて消費者と交流した。
国際連合食糧農業機関(FAO)が6月1日を「世界牛乳の日」と提唱したのを受け、Jミルクが2007年に6月1日を「牛乳の日」、6月を「牛乳月間」と定めた。それ以降、全国各地で集中的にイベント等が毎年開かれている。今年はロゴマークを一新し、「World Milk Day」のイメージを前面に打ち出した。