乳滴/2019年11月20日号
稲わらの使い道
自宅に届いた農協だよりに「台風19号等の影響により、ほ場に堆積した稲わらにお困りの農家の皆様へ」という町のチラシが挟まれていた。「撤去に係る経費は国による補助事業の対象」との趣旨で、各農家に処理の手続きを案内している。毎朝バス停に向かう小道で水路のふちに大量の稲わらが堆積しているのが気になっていた。実は近所では稲刈り後に大雨が降ると大体こうなるのが近年の光景だったが、特に今年は各地で洪水被害が広がり、稲わらが用水路や農地に流入・堆積して大問題になっている。
約40年前、うちではバインダーで刈った稲は稲架(はさ)で干し、脱穀後のわらは納屋に積み、畑に入れたり煮炊きにも使った。稲架掛けや、わら集め、かまどの番を手伝った。注連縄用の縄ないはもちろん、苺のトンネルにかぶせる菰(こも)もわらで編んだ。菰編み器は今でいうレンタルだったのか、秋になるといつの間にか納屋の隅に置かれ、雨の日などは若干着ぶくれ気味の祖母と母が裸電球の下で編んでいた。あの頃は今よりわらの使いみちが豊富だった。
今、稲わらは次の春に向け鋤き込むことにしているが、そんな稲わらがいわば邪魔者扱いになっている。稲わらの価値が再評価され、利用率が高まるような知恵はないものか。